錦明竹


関西弁の口上(橘ノ小枝)

 わてな、中橋の加賀屋佐吉方から使いに参じました者んで。
 先度仲買の弥市が取り次ぎました道具七品のこってござります。
 祐乗ゆうじょう宗乗そうじょう光乗こうじょう三作さんさく三所物備前長船住則光
 横谷宗a四分一拵え小柄付きの脇差
 あれな、柄前鉄刀木やゆうておりましたが、埋木やそうで、
 木が違ごうとりましたんで、ちゃんとお断り申し上げま。
 自在は黄檗山錦明竹寸胴の花活けには遠州宗甫の銘がございます。
 織部香合のんこうの茶碗。
 古池や、かわずとびこむ水の音いいます風羅坊正筆の掛け物ん。
 沢庵木庵隠元禅師貼り混ぜの小屏風
 わいの旦那の旦那寺が兵庫におましてな、兵庫の坊さんぼんさんえろう好みます屏風によって、
 表具屋へやって、兵庫の坊主の屏風に致しますと、かようお言付け願いとうおますねん。

道具七品

 さて、この中でどれ道具七品はなのか?

 自在と香合が入っていない速記があり、これだと七品は
 三所物・船則光・脇差・茶碗・花活・掛軸・小屏風だとわかりやすい。

 小枝が錦明竹を演じる上での道具七品は次のように考えている。

   1 祐乗宗乗光乗三作の三所物付きの、備前長船住則光
   2 横谷宗a四分一拵え小柄付きの脇差
   3 黄檗山錦明竹の自在と花活
   4 織部の香合
   5 のんこうの茶碗
   6 風羅坊正筆の掛け物
   7 沢庵木庵隠元禅師貼り混ぜの小屏風

 の刀剣は小柄が重複するので別のものと思われる。
 脇差を小刀の意味とすれば、大小拵えのそれぞれに小柄が付いている長船則光が一組ともいえる。

 で二品としたのは、の自在と花活けを一組にしたいわけがある。

 前述の通り、関西弁の口上には、自在がはいっているものと、いないものがある。
 それぞれを一品とすれば、一方は自在錦明竹。他方では花活けが錦明竹になってしまう。
 これは題名にかかわることなので、寸胴の花活は遠州宗甫銘があるだけではなく、錦明竹であって欲しい。

「備前長船住則光」がに掛かるかに掛かるかは悩むところであるが、
「祐乗宗乗光乗三作の三所物付き備前長船住則光……」と演っている師匠もいるので、とした。

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