カラスの話(その3) びっくりした副住職が訳を聞いてみると、次のようなことであった。 花に水をかけていると、頭の上をカラスが「わざと」低空飛行をしていったのだそうだ。 しゃがんでかわしたヒロミは、恐る恐る顔を上げると、カラスはどこかに行ってしまっていない。 ほっと一安心して、またジョウロで水かけを始めたのだが、何かフト視線を感じて目を上げると、 屋根の縁の、ちょうど頭の真上にカラスがとまっていて、「私をジッと、上から見おろしていた。」 ・・・ということである。 … どうも、カラスにからかわれていると、思いませんか? 日頃から、鳥類などには異常に恐怖を示すヒロミに対し、副住職は 常に諭していた。 「何にもしていなければ、カラスは襲ってこない。」 「平然としていればいいんだよ。」 「平常心是道 (へいじょうしんこれどう)! 喝っ!」 「かえって必要以上に怖がるから、カラスは面白がって ちょっかい出してくるんだぞ。」 「カラスに、『 あいつは ちょっとしたことでも大騒ぎするから面白いぞ。』 と思われて、 からかわれているんではないの?」 … 副住職も からかいはじめている。 「きっとカラスに遊ばれているんだ。あはははっ!」 … ほとんど お諭しから はずれてしまっている。 動物愛護の「舌切りスズメ」の話をして聞かせたこともあるが、こうした尊い副住職の教えにも いまだ ヒロミは心を改めないでいる。 (実際、特定の個人をカラスがねらうことはあるらしい。そういう人は、もしかすると…何かあるのかもしれませんね。) |