2002年2月16日(土)

警戒は怠りなく
 きょうでいよいよヨーロッパ滞在最後の日。大いに楽しもう。


 ここのホテルでも朝食がついているのだが、なにぶん起きるのが遅くて食べてる時間がない。まあ、食べに行くのが面倒くさいというのもあるのだが…。

 けさはUさんとTさん、Eさんの三人と、
10時に「グラスゴー美術学校」で待ち合わせをしている。地図上では、ここのホテルから歩いてもさほどの距離ではないようだが、念のため9時半にホテルを出る。

 学校に向かう前に、今度は僕がATMでお金を引き出すことにする。ホテルの隣が「チャリング・クロス
Charing Cross)」という駅で、その外壁にATMの機械が埋め込まれてあるのだ。これもきのうと同様、簡単に引き出せた。だが、さっきからこちらの様子をじっと見ているおじさんがいる。怪しい。気を付けなくちゃ。【後日クレジットカードの明細書を見たら、両替屋よりもATMの方がレートが良かった。これからはなるべくカードを使うようにしよう。】

いよいよあの部屋へ
 「グラスゴー美術学校」は思ったよりも近くにあって、
10分もかからず着いてしまった。周辺をうろうろしながら、三人が来るのを待つ。小学生くらいの子供達が、親の運転する車から降りて学校の中に入って行った。何かあるのだろうか。

 10時過ぎ、三人はタクシーでやって来た。さっそく一緒に学校の中に入る。玄関ホールには、すでにたくさんの人が見学ツアーの始まりを待っていた。

 ホールの脇にある売店でツアー料金5£を払う。人数が多いので2グループに分かれて行われた。ツアーガイドはここの学生がやっているらしい。先発のグループには女子学生が、後発の僕らのグループには男子学生が付いた。そしていよいよツアーの始まりだ。

 玄関ホール正面の階段を上る。マッキントッシュ氏は日本にも興味を持っていたらしく、お寺の釣鐘を小さくしたものを階段部分にぶら下げてある。なんだか不思議な感じだ。建物の外観は石造りなのだが、内部は木がふんだんに使われてあり昔の木造校舎を髣髴とさせる。ストロボを使わなければ写真も
OKということなので、カメラを用意。

 “マッキントッシュ氏の部屋”には、氏がデザインした家具が展示されている。これら家具にも日本趣味が反映されており、中には「唐破風」を付けたキャビネットまであった。

 最上階に行くと、子供達が大きな絵を描いていた。さっきの子供達だろう。休みの日には絵画教室が行われているらしい。世界的に有名なこの学校で学べるなんて、なんとも幸せな子供達だ。

 いろいろと説明を受けながら…といっても英語なのでさっぱり分からないが…フムフムと見学して回る。Uさんによれば、マッキントッシュ氏はアル中だったらしい。よくおかしなデザインを大工さんに押し付けていたそうだ。ガイドさんもそんな事を言っていると、Tさんも話す。

 そして最後のクライマックス、あの有名な図書室に入る。黒い木造の室内は吹き抜けになっていて、2階部分は回廊のようになっている。そんなに広くはない。机も椅子も同じ色の木製で、部屋に溶け込んでいるといった感じがする。高い天井からは独特なデザインをしたペンダントライトが下がり、ちょっと不思議な空間だ。窓は1階から2階までの細長い形をしている。一体どんな本が納められているのか見てみたいものだ。TVでは安藤忠雄さんが2階に上がりいろいろ説明されていたので、僕らも2階に上がれるのかなと思ったら、ガイドさんはさっさと電気を消してしまい、図書室の見学は終わってしまった。他の場所より見学時間が短いような気がするが、時間が押してしまったのかも知れない。

 これでまた玄関ホールに戻り、約1時間でこの見学ツアーは終了した。この美術学校の見学は、自分にとって予想外のうれしい出来事であった。下の写真をクリックしてみてください。
結構うまい昼メシ
 ブキャナン通りに進んで、きのう見つけた“マニアックな店”の横を入った所にあるパブに入る。外から見た様子と違い意外と大きな店内で、木造の複雑な階層になっている面白い店だ。僕らは地下に下りて席を取った。

 このフロアには大きなスクリーンが設置してある。多分サッカー(こちらではフットボールか)などの中継を映して、酒を飲みながら盛り上がるんだろうな。

 注文は上のカウンターまで行かなきゃならないようだ。僕が留守番となり、他の四人が注文をしに行った。僕はジンジャーエールとサンドウィッチを頼む。飲み物は自分で運ぶ事になっているようだ。各自手に持って降りてきた。食べる物は後で運んで来てくれる。僕の注文したジンジャーエールは、日本では見かけないラベルが付いている。生姜の味が強いが美味しいジンジャーエールだ。
かわいい地下鉄
 さて、地下鉄に乗って『ハンタリアン・アート・ギャラリー
Hunterian Art Gallery)』に行く事にする。ブキャナン通りから、エスカレーターで「ブキャナン・ストリート駅」に下りる。改札の手前にある切符の自動販売機で、往復切符(1.85£)を購入。改札はもちろん自動で、パリの地下鉄の自動改札と同じバーを回転させる方式。ただし飛び越え防止の扉はない。

 ホームに行くとすでに電車が到着していた。それを見てびっくり、ずいぶん小さな電車だ。まるでオモチャのよう。天井が低くて、扉が天井まで回りこんでいる。背の高い人は首を曲げていなければならない程で、もちろん網棚などはない。

 Tさんに促され降りた駅は「ヒルヘッド(
Hillhead)駅」。駅前は商店街になっていて庶民的な雰囲気だ。

 通りに青い『シトロエン2CV』が停めてあった。パリでもあまり見かけなかった車をこんな所で目にするなんて。近くに寄ってよく見てみると良かったと、後になって悔やむ。もしかすると珍しい右ハンドル車だったかも知れない。
こんな家に住んでたの?
 ハンタリアン・アート・ギャラリーは、駅から歩いて
10分位のグラスゴー大学にあった。実は、このギャラリーの中に『マッキントッシュ・ハウスThe Mackintosh House)』があるのだ。これはマッキントッシュ氏の住居をギャラリーの建物の中に再現したもので、実際に使われていた家具などを展示してあるのだという。無料だが、写真はダメらしい。眼光鋭い係員がにらみを利かせている。

 Eさんが、本棚の中に日本の本を発見。う〜ん、中を開いて見てみたい〜!。彼はどんな本を読んでいたのだろうか。興味津々。


 帰りの地下鉄はすごいラッシュ。あまり奥まで入ると出るのに苦労しそう。だがどんどん奥に押されてしまう。「セント・イノック駅」で降りようとするが、やっぱり出るのが大変。「エクスキューズ・ミー」を繰り返しながら、ようやく電車から降りることが出来た。みんなも無事降りることが出来たようだ。
男達は酒びたり
 クオリティ・ホテルの近くで一杯やろうということになりパブに入る。少々薄暗く、歴史を感じさせる店だ。お客もおじさんばっかりだ。東洋人がこんなところに来るのは珍しいのか注目の的。若い女性が入ってきたと言うのも、その理由にあるのカモ。女性はカウンターの中のおばさんとEさんだけだ。

 多分常連客ばかりが集まるところなんだろう。この店の奥にも大きなスクリーンがあって、アメリカン・フットボールの試合を映していた。地元チームの試合があるときなんかは大騒ぎするんだろう。イギリスの男達はこういうところに集まって酒を飲んでいるけど、女性達は何をやっているんだろ。

 まずはビールで乾杯をする。客の一人が話しかけてきた。相当酔っ払っているようだが、訛りがひどくてTさんにも理解不能だ。店の主人が連れ戻してくれたが、今度はTさんと店の主人が話し始めた。店の主人は“標準語”を話しているようで、Tさんとの会話が成り立っているようだ。
キウィ
 ところで、皆さんはニュージーランド人を英語で何と言うのか知ってますか?。僕はイギリス(
England)人がEnglishだからニュージーランド(New Zealand)人はNew Zealishと思ったんだけど、本当はNew Zealanderと言うんだそうな(複数形はSが付く)。知らなかった。他にも「Kiwi(s)」とも言うらしい。この「キウィ」でもあまり失礼にならないとか。これは「キウィ」のTさんが言っているので間違いない。きっと“キウィと同じこの島の住人”という感覚なんだと思う。
おみやげ探しはひと苦労
 そろそろUさん達三人は、ロンドン行きの飛行機に乗るため空港へ行かなければならない。クオリティ・ホテルの前で、丁寧に挨拶をしてお別れだ。もっとも弟は、日本に帰れば彼らとまた職場で一緒になるのだけれど…。


 さて、急に二人きりになってちょっと心細くなってきたが、そうも言っていられない。仕事場へのおみやげを探しに「セント・イノック・センター」へ行ってみる。きのうは閉店後に行ってしまったので閑散としていたが、きょうは打って変わってたくさんの人でごった返している。

 一角にチョコレート屋さんがあった。「ソーントンズ
Thorntons)」というチェーン店のようだ。入ってみると店内にたくさんのチョコレート(当たり前だ)。箱入りで8£のチョコを見つけた。何個入りなのか分からないので、店員さんに聞いてみる。が、聞くんじゃなかった。何を言っているのかさっぱり分からない。何度か聞き直し、ようやく“Forty”と言っているのが分かった(確かフォーデとか言ってたと思うが良く思い出せない)。手のひらに指で40と書いてみせると、大きくうなずいた。
夕食とるのもひと苦労
 さて、夕食はどうするか。きょうは土曜日だ。またレストラン探しに手間取りそうだ。もう陽も落ちて暗くなってきた。あちこち回ってみるが、やはりどこのレストランも混んでいて入り口に行列が出来ている。

 仕方なく思い切ってちょっと高そうなレストランに入ってみる。しかしここも一杯で
45分待ちだと言う。次にブキャナン通りのイタリアン・レストランに入ってみる。スパゲッティ専門店のようだ。スパゲティならそう高いものでもなく、当たり外れも少ないだろう。だが予約で一杯だと笑顔で断られてしまう。再び放浪の身となり、暗くなったグラスゴーの街を彷徨い歩く。

 クイーン通り(
Queen st.)は、なにやら若者が大勢集まってちょっと恐い雰囲気。警官まで出ている。何事だろうか。散々歩き回るが、適当な店は見当たらない。

 ようやく「ロイヤル・エクスチェンジ・スクエア
Royal Exchange Square)」で『カフェ・ウノCaffe Uno)』というイタリアン・レストランを見つけた。ここならリーズナブルそうだ。席も空いている。さっそくカルボナーラを注文。日本で食べるカルボナーラよりも淡白な味だ。量も適度で、まあまあ可もなく不可もなくといったところだろうか。
やっぱり階層があるのか
 再び街を探索してみる。きょうで最後だから名残惜しい。ソーキホール通りのショッピングセンターらしき建物に入ってみる。名前は忘れてしまったが、まあ日本でいうアメ横といった感じだろうか。小さな店が並んでいるのだが、雑然とした店の雰囲気。
12階になっていて、天井も低い。いかにも低所得者向けと言ったら失礼だろうか。店の人も、なんだか白人ではない人達が多いようだ。
げげっ、これはやばい
 ホテルに戻る途中、本来泊まる予定だったC・ホテルを見に行ってみようと思い付いた。ヴィンセント通り(
Vincent st.)からブリスウッド通り(Blythswood st.)を南に曲がり、下り坂になっている人気のないビジネス街を歩く。周辺の注意を怠らないようにする。こういう人気のない所は本当なら歩かない方がいいのだが…。

 ところが、ビルのたもとに若い女の人が立っているではないか。こんなところで無用心なと思ったが、よく見れば、他のビルの下にも女の人が立っている。ということは…“あの”女性達に違いない。これはマズイ所に来てしまった。急いで通り過ぎなければ。
本来ここだったのね
 アーガイル通り(
Argyle st.)に突き当たり、その正面がC・ホテルなのだが建物は真っ暗だ。2階のガラス窓にビニールが張られてある。ここでトラブルが発生したようだ。玄関に張り紙がしてあり、用事がある人は向こうへと矢印が書いてある。なぜ閉鎖されているのか理由は書かれていない。全館閉鎖しなければならない事態というのは相当な事だが、なんとも素っ気ない。中に人影が見えたが、すぐに消えた。【未確認だが、現在はすでに営業を再開しているかも知れない。】

 帰りは別の通りを行くが、こちらにも女の人が立っている。一人の男が、女の人に声をかけていた。僕らは急ぎ足でホテルに向かった。
楽しかった旅も、もうおしまい
 きのうグラスゴーに着いたばかりだが、あしたは帰国の日。ホント名残惜しいが、あしたの朝あわてないように、荷物をまとめてから寝る事にする。


 それにしてもこの旅行の間、ずっと歩きっぱなしだったなあ。しかし意外と疲れなかった。見るもの聞くもの、みんな楽しかったせいかな。