2002年2月13日(水)

おいしい〜
 ゆうべドアノブにぶら下げておいた朝食の注文書には、8時から9時の間に部屋に運んでくれるように書いておいたのだが、8時前にボーイさんがやってきた。きょうは早めに起きて良かった。チップがいるんだろうと思っていたが、取り付く島も無くさっさと出て行ってしまった。頼んだのはトースト、シリアル、牛乳、紅茶など。充分お腹がいっぱいになる。食べ終わり、お盆に1£コインを載せて廊下に置く。


 実は、あしたの講演会の会場がどこなのか、弟は知らないのだ。日本を発つ7日の時点では、マンチェスター側から会場の件についての連絡がまだなかったという事だ。弟はフロントに頼んで、会場がどこになったのか知らせてくれるように、日本の事務所にファクスを送ってもらった。

まずは情報収集の筈が…
 さて、せっかくだから外に出る事にする。まずは観光案内所に行くことにして、持って来たガイドブックを見てみる。この本には、観光案内所は『タウン・ホール
Town Hall)』内にあると書かれてある。

 それにしても日本ではマンチェスターに関する情報が極端に少ない。このガイドブック(イギリス編)では2ページのみ。中にはマンチェスターの項目が無いガイドブックまである。インターネットでも「ユナイテッド」というサッカーチームの話ばかりだ。

 ホテルのフロントに置いてあった地図(コピー)によるとタウン・ホールはホテルからそれ程離れていないようだ。とにかく歩いて行ってみる事にする。外は、思ったよりも寒くない。ホテルの前はポートランド通り
(Portland St.)。西へ約200メートル進みプリンセス通り(Princess St.)を右に曲がる。しばらく行くと、交差点を路面電車が通過していった。「メトロリンクMetrolink」というらしい。メトロとはいえ、地下鉄ではないのでややこしい。その交差点の目の前に、タウン・ホールはあった。古い、荘厳な感じの建物だ。

 さっそく正面玄関から入っていくと、一人のおじさんがカウンターに座っている。え?ここが観光案内所?。なんだか、閑散としている。そのおじさんに市内の地図はありませんかと聞いてみる。すると、ショッピングガイドというパンフレットをくれた。その中に地図が印刷されている。ホテルの地図はこれをコピーしたもの?かも。観光案内所のくせにこんな物しかないのだろうかと訝しながら外に出る。
【実は本当の観光案内所はここではなかったのだ。その事は翌日知る事になる。】
楽しみが消えた
 タウン・ホールから歩いて
10分程の『グラナダ・テレビ局Granada TV)』に行ってみる。「グラナダTV」といえば、以前NHKで放送された「シャーロック・ホームズの冒険」を製作したTV局だ。今は亡きジェレミー・ブレットがカッコ良かったし、露口茂さんの吹き替えも良かった。ガイドブックにはスタジオ・ツアーがあり見学出来ると書かれてある。すごく楽しみだ。

 中に入り、受付のいかついおじさんに聞いてみる。しかし何という事だ、ツアーは2年前にやめてしまったという返事。がっかりして局を出る。
いやあ〜、まいったまいった
 街を歩いているとよく見かけるのが、トヨタのランクルや三菱パジェロといった日本製の四輪駆動車。同じ右ハンドルだから日本からの中古車も人気だと聞いた事がある。他にもスバルのインプレッサや日産のアトラスなんかも走っている。でも多いのはドイツ、フランス車かな。フォードも結構走っているみたいだ。


 とぼとぼと歩いていると、『GREAT NORTHAN RAILWAY』と書かれたレンガ造りの建物の前に来たグレート・ノーザン鉄道?どこかで聞いた事があるぞ。ショッピングセンターにでもなっているのだろうかと思い、中に入ってみる。なんだか、がらんとしている。2階に上がって進んでいくと、奥は映画館になっているようだ。変わった建物になっているので弟が写真を撮っていると、トランシーバーを持った警備のおじさんがやってきた。恐らく監視カメラで僕らを見ていたんだろう。勝手に写真を撮っちゃイカンと注意されてしまった。弟が、自分は日本の建築家でここは興味がある建物だと言うと、おじさんは写真を撮るなら書類にサインしろ(身振りでそう判断)と言う。まあ、それ程大袈裟なものでもないので急いで建物から出る事にする。それにしてもビックリした〜!。
けっこう賑やかじゃないか
 さてこれからどうしようかと、さっきタウン・ホールで貰ったショッピングガイドを見てみると、北の方に『アーンデイル・センター
Arndale Centre)』という大きなショッピングセンターがあるようだ。歩いてもさ程の距離ではなさそうなので行ってみる。

 そこはタウン・ホールから歩いて5分程のところにあった。まるで町中の人がここに集まっているんじゃないかと思う程、この周辺はたくさんの人で賑わっている。他の場所が閑散としていたので、ちょっと面食らってしまった。

 センターの中に入ってみる。
2階建てになっていてかなり大きい。この中もたくさんの人だ。本屋があったので覗いてみる。旅行のガイドブックに「JAPAN」を発見。開いて中を見てみると…、決して間違ってはいないのだが、日本に来てがっかりするんじゃないかなあと思われる“いかにも”といった派手な写真がいっぱいだ。

 センター内を歩き回っていると、アレレどっかで見たような赤いマークがあるぞ。これは衣料品の安売り量販店、日本の「ユニクロ」ではないか。こんなところにも進出していたのかとビックリ。日本企業も頑張ってるなあ。

 サッカーチーム「マンチェスター・ユナイテッド」のグッズをお土産に買いたいと弟が言うので、スポーツ用品店に入ってみる。隅のほうに小さく「ユナイテッド・コーナー」があった。ほとんど目立たないので、見過ごすところだった。ボールペンやマグカップ、帽子
やマフラーなどが売られていたが、思った程品揃えが無く寂しい感じだ。僕はサッカーには全く興味が無いのだが、友人のお土産に50OFFと書かれたリストバンドを買った。

 トイレに行きたくなってきた。トイレ探しに苦労したパリの悪夢が甦る。どうもトイレに不自由したパリの感覚がまだ残っているようだ。しかし、それは簡単に見つかった。日本のように自由に使える有難さ。このアーンデイル・センター、広くて全部見て廻るのにかなり時間がかかってしまった。外に出て周辺も探索してみる。だが、僕にとってあまりめぼしいものは無かった。
大ハズレ
 さて、そろそろ暗くなってきたので、マクドナルドにでも寄って晩飯でも買ってホテルで食べようかと思ったら、弟はファーストフードが嫌いだと言う。僕はファーストフードでも全然こだわらない方で、かえってレストランなんかに入ったら、メニューに写真がないのでどんな料理か分らない、量も分らない、言葉が分らない、時間がかかる、お金がかかるなど面倒な事が多い。気軽に入れる日本のファミリー・レストランのようなところは、この辺りには無い(ようだ)。なるべくお金をかけず時間もかけずにと思っていたのだが、じゃあどうする。地図を見ると、ホテルの近くにチャイナタウンがあるようだ。仕方がない、そこで中華でも食べる事にするか。


 アーンデイル・センターとブリタニア・ホテルは、歩いて5〜6分位しか離れていない。ホテルは結構便利な場所にあったのだ。さてチャイナタウンに来たのはいいが、どこに入ろうか。まあ、悩んでいても仕方がないので適当に入ってみる。

 店の名前は…忘れた。こぢんまりとした店だ。店員さんはもちろん全員中国人のようだ。メニューは漢字で書かれてあり、英語が併記されている。弟はこの店の特製丼、僕はエビ玉丼とジンジャーエールを注文する。まずジンジャーエールが来た。カナダドライの小瓶だ。ぬるい。普通、清涼飲料水は冷蔵庫に入れておくものだと思うのだが、ここでは常温で置いておくらしい。しばらくして料理が運ばれて来た。弟の特製丼はご飯の上に炒めた野菜や肉を載せた様な物で、僕のエビ玉丼は読んで字の如くカニ玉をエビにしたもの。それにしても、ご飯がぼそぼそで不味い。いくらインディカ米でもこれは非道い。こんなものを日本で出したら、絶対にお客は怒り出すに違いない。エビ玉も味が薄い。幾らだったか忘れてしまったが、確か千円以上はしたと思う。支配人と思しき蝶ネクタイの男の人は店内をウロウロ行ったり来たりで落ち着かないし、ここはハズレの店だった。しかし僕らが帰る時、入り口には席が空くのを待っているお客の列が出来ていた。気の毒に。


 道に落ちているイヌの糞に閉口したパリだったが、こちらでは酔っ払いが吐いたモノに気を付けるべし。路上にもお国柄が反映している…のか(?)。
そこはいったい何処なの?
 ホテルに戻る。するとホテルの外観がきらびやかな電飾で光り輝いているではないか。日本のラブホテルもビックリ。昼間の威厳のある外観が台無しだ。ナンテコッタと部屋に入る。するとまたビックリ。けさチップのつもりで枕の上に置いた1£コインが、ベッドの脇のテーブルに置かれてあった。朝食を運んでくれたボーイさんといい、チップは要らないのだろうか。こんな事は初めてだ。もうチップを置くのは、やめることにしよう。


 もうすでに、弟の事務所の代表者Uさんが、マンチェスター空港近くの「HILTON HOTEL」に到着している頃だ。弟がそのホテルに電話をしてみるが、何故か外線が通じない。まあ、Uさんにはこちらのホテルの事は知らせてあるので、そのうち向こうから連絡があるだろう。

 そうこうしていると、ドアの下から紙が差し込まれてきた。よく外国映画で、ドアの下から手紙や新聞などをボーイさんが入れるシーンがあるが、まさにそれと同じ事が、今現実に行われたのだ。初めてのことなので、ちょっと感動。

 その紙は日本からのファクスだった。あしたの講演会の会場は、『cube』というところだそうだ。しかし住所が書いてない。電話帳で調べようとしても部屋にあるのは職業別なので、「cube」とは一体何なのかが分らないと調べようがない。何かコンベンション・センターやホールなどの通称なのだろうか。タクシーの運転手さんに言えば連れて行ってくれるような所なのだろうか。どおするんだ。結局、Uさんの連絡待ちなのか。

 弟が、ドアノブにぶら下げる朝食の注文書が見当たらないと言う。メイドさんが新しいものを用意してくれなかったようだ。弟がヒルトンのUさんにファクスを送る為フロントに行くので、ついでに2枚貰ってきてもらう。

 その時弟が、フロントの人に部屋の電話の外線が使えないと言ったところ、チェックインの時にクレジットカードの提示が無かったので使えないのだと言われたそうだ。カードの提示なんか求められなかったぞ!だったらそん時に言え!ってんだ。とホテルの人には言えず、心の中で独り言。こんな時、これは日本人に対する差別だと思ってしまうのは、多分に自分の“ひがみ根性”のせい…カモ。