2002年2月10日(日)
ベルシー公園まで歩く
 きょうも8時に目が覚める。今夜は、弟の大学時代の先輩というGさんと会う約束がある。パリで活躍している日本人の方だ。外は晴れているようだ。

 朝食を食べ、ホテルを出たのがやっぱり
10時。歩いて『ベルシー公園Parc de Bercy)』へ行く。ホテルからは10分程度だ。ここには『アメリカン・センター』という有名な建物があるのだと、建築関係の仕事をしている弟が言う。確かにモダンな建物だが、今は使われていないとか。

 この公園に変なオブジェが立っていた。世界中の人達の姿を表現したものらしい。日本人を表したものもあったが、これは爆笑モノだ。扇子のように持っているのは「東京下水道」と書かれたマンホールの蓋ではないか。

 その背後、セーヌ川の向こうに『新国立図書館』が見える。弟が是非行きたいと言っていた所だ。この建物は変わったデザインで、
4冊の本を開いて四隅に向かい合わせに立たせたような形をしている。

 そこへ行く前に『シネ・シティ
Cine City)』へ行ってみる。ベルシー界隈は近年再開発され、新しい建物が次々建っているとか。この映画館もその一つ。この脇には『フランソワ・トリュフォー通り』なんてのもある。
でっか〜い図書館なんだが…
 セーヌ川を渡り、新国立図書館に行ってみる。日曜日の開館は正午からのようだ。入り口は東と西の2箇所。それぞれの入り口には、たくさんの人が図書館の開くのを待っている。その間、弟は写真を撮りまくる。

 この建物は全面ガラス張りで、木製の大きなルーバーで日光を調節しているのだという。本来ここに本を保管する筈だったのだが、日光が本に良くないという事で全て地下に移されているのだそうだ。そんな事、設計段階で考慮に入れていなかったのかな。

 正午、ようやく入館が始まった。東側の入り口から入ってみる。入り口で一人一人手荷物の検査を受ける。カバンに忍ばせていたぬいぐるみを見て、係員に笑われてしまった。このぬいぐるみは、いつも茶の間に飾ってあるもの。初めて大阪に行った時、グランド花月の売店で買ったものだ。

 それはいいとして、僕は早くトイレに行きたかったのだ。ところが!無情にもトイレの入り口がベニヤ板で覆われているではないか!。西側の入り口付近にもトイレはある筈と反対側に急ぐが、こちらも同様に入れない。トイレだけの人はダメよ、という事なのか。

 ホント、パリではトイレに泣かされる。道路には聞き知に勝る程のイヌの糞だらけ。うかつにヨソ見をしながら歩けない状態だ。人間様の排泄の事も考えちゃいないよ、という事なのだろうか。まあ、文化の違いと言ってしまえばそれまでなのだが…。きちんと手続きをとって本の閲覧をしに来た人だけが、国立図書館のトイレが使えるって事なんでしょうね。
そうだ、カルネにしよう
 図書館の売店で買い物をして、次の見物場所に向かう事にする。ここから一番近い
6号線の「ケ・ドゥ・ラ・ギャール(Quai de la Gare)」という駅に行く。6号線はこのあたりで地上に出て高架を走る。この駅もクラシカルな建物で雰囲気がいい。実際に古い物なのだろう。

 ここでふと、切符を買うならカルネ(
10枚まとめて)の方が得なんじゃないかと気が付いた。窓口があったのでさっそく、「アンカルネ・シルブプレ」と中のおねえさんに言ってみる。すると通じたらしく「9ユーロ○○セント(ごめん忘れた)」と言う(実際にはレジの表示を見て分ったのだが)。これはだいぶ得だ。10E札を出して、お釣りと切符を10枚貰う。二人で5回分だ。

 ここで注意しなければならないのは、未使用の切符と使用済みの切符をうっかり一緒にしない事だ。大抵、使用済みの切符には目印のマークが付くが、駅の改札によっては付かないところもあるためだ。駅の出口では切符の回収はしないので、駅から出たらすぐに捨てるか、記念に持ち帰るならバッグの奥底にしまっておこう。
超満員
 さて、目指すは『ポンピドー・センター
Centre Georges Pompidou)』。ここで、ジャン・ヌーヴェルJean Nouvel)氏という有名な建築家の催し物をやっていると、弟は言う。

 「ナシオン(
Nation)」駅で1号線に乗り換え、「オテル・ドゥ・ヴィル(Hotel de Ville)」駅で降りる。行ってみると、ポンピドー・センターは大通りの裏側に入り口があるのだった。

 おお、これか。鉄骨が剥き出しで、エスカレーターが外側に付いている。以前に写真で見た事がある建物だ。だが、またまた入り口で手荷物の検査がある。ちょっとウンザリ。反面、多少安心でもある。

 中に入ると凄い人の数。チケット売り場は長蛇の列だ。トイレがあったので急いで行ってみる。すると、そこもごった返している。こりゃダメだと諦め、ポンピドー・センターを後にした。
やっぱりここは外せない
 次に向かったのはパリ観光の定番『凱旋門』。オテル・ドゥ・ヴィル駅から1号線で一直線、「シャルル・ドゴール・エトワール(
Charles de Gaulle-Etoile)」駅で降りて外に出る。すると目の前に凱旋門が現われた。さっそく写真を撮る。それが「口上」の写真。

 さて、シャンゼリゼ通りに、凱旋門に行く地下通路の入り口がある筈。行ってみよう。おっと誰だ!このロータリーを無理やり横断しようとしている日本人は!。まったく危ない。事故らなかったから良かったものの、ルールを守らないこんな奴は日本人の恥だ。シャンゼリゼ通りに来ると、すぐに地下通路の入り口を見つけた。と、通りの向こう側に「
Toilette」の看板があるではないか。
やっと見つけたトイレだが…
 こちらの方が先決だ。急いでシャンゼリゼ通りを渡る。見るとトイレは地下にあるようだ。転がるようにして階段を下りる。入って右側
10メートル程先にある女子の方には白衣を着たおばさんがいるのだが、入り口すぐの男子の方は、コインを入れバーを回して入るようになっている。ところがコインの投入口には“2F”の表示。フランのコインなんか持ってないぞ。どうすりゃいいんだ。と、おろおろしていると、30代位の日本人男性4〜5人が下りてきた。やっぱり2Fというのを見て、諦めて引き返して行った。

 僕らも彼らの後ろから階段を上りかけたが、オイオイ、向こうの白衣のおばさんに聞けばいいことじゃないか。と、また引き返し、僕は意を決してそのおばさんに声を掛けてみた。「アイ・ハヴ・ナット・フラン」。しかし通じない。知ってる英語で色々言ってみたが、彼女は僕の英語が分らないようだ。僕も彼女のフランス語が分からない。だが、何か言いながら彼女が壁の張り紙を指差した。そこにはトイレの料金が書かれてあった。ユーロの料金も。
38セント(だったかな)を渡して2F硬貨を受け取る。それを見ていた弟も2F硬貨を手にし、そしてやっとスッキリ出来たのであった。何でもアタックしてみる事が大事なんだなあ。求めよ、さらば与えられん。な〜んてね。
門をくぐる
 すっきりしたところで、地下通路を通って凱旋門の下まで行ってみる。地下道にある、屋上へ登るエレベーター乗り場は長蛇の列だ。これからエッフェル塔やルーヴルにも行かなきゃならないので、屋上へ行くのは諦めて階段で地上に出る。そこは凱旋門の真下。まさにここがパリの中心地といった様に、何本もの道がここから伸びている。

 シャンゼリゼ通りの反対側は、「ラ・デファンス(
la Defense)」地区へ向かうグランダルメ(Grande Armee)通りだ。遠くに新凱旋門が見える。しかし、感慨に浸っている間もなく、次の『エッフェル塔』に向かう。忙しい。
錆びてるんじゃないの?
 6号線で3つ目の「トロカデロ(
Trocadero)」駅で降りる。僕らと同じエッフェル塔を見物する人達だろう、たくさんの人が電車から降りていく。人波に押されるようにして地上に出ると、目の前が『シャイヨー宮』だ。そのまま、シャイヨー宮へと流される。そしてついに、パリの空にそびえ立つエッフェル塔の雄姿を目にする事になる。ジャジャ〜ン。シャイヨー宮からエッフェル塔を見た第一印象=『おっ、百年以上も経って、錆びているのか?』。

 景観を壊さないように地味なこげ茶色にしているのだろうが、真っ赤な東京タワーを見慣れている目には、なんだかサビサビになっているようで美しくない。どうせなら、国旗と同じに塗り分けた方が綺麗でいいと思うのだが。また、工事中なのか下の展望台の部分に緑色のネットが掛けられているのにも、ちょっとがっかり。

 屋台でドーナツとコーラを買い、エッフェル塔を眺めながら遅い昼食をとる。こういう所は値段が高いので、あらかじめサンドイッチなんかを準備しておくと良いカモ。

 さてと、エッフェル塔の真下まで行ってみよう。シャイヨー宮を下りてセーヌ川を渡り、エッフェル塔の真下に来る。大阪通天閣は下が道路になっているけど、ここは何も無い。薄暗く、ただがらんとしているだけだ。しかも何故かその中心部分の地面が土のままになっている。何か理由はあるのだろうか。

 人はやたらと多い。怪しげな人もうろうろしている。こういうところは身辺に注意が必要だ。銃を持った兵士も巡回している。さて次は、『ルーヴル美術館』だ。
足早に定番2件
 エッフェル塔に登る人の長蛇の列を尻目に、公園を通って「エコール・ミリテール(
Ecole Militaire)」駅で8号線に乗り、コンコルド駅で1号線に乗り換える。

 本当は「パレ・ロワイヤル・ミュゼ・デュ・ルーヴル(
Palais Royal Musee du Louvre)」駅で降りなければならなかったのだが、間違えて「ルーヴル・リヴォリ(Louvre Rivoli)」駅で降りてしまった。地上に出ると、ここはルーヴル美術館の裏側ではないか。5時半を過ぎて、そろそろ暗くなってきた。急いで表側に向かおう。

 5分程でガラスのピラミッドがある正面広場に着いた。ここも人でごった返している。もちろん日本人もたくさんいる。しかし、中に入って見ている暇は無い。急いで記念写真を撮って、次は『ノートルダム寺院』へ向かう。


 シャトレの駅から出ると、もう周囲は真っ暗になっていた。そこから歩いて、セーヌ川の中洲シテ島にあるノートルダム寺院に行く。ライトアップしてあるが、かなり暗いので写真に写るだろうか。
夜の待ち合わせ
 もうそろそろ、弟の大学時代の先輩、Gさんと会う時間だ。約束してあった『アラブ世界研究所
Institut du Monde Arabe)』前へ急ぐ。きょう、ポンピドー・センターへ見に行く予定だった、ジャン・ヌーベル氏が設計した建物だ。ノートルダム寺院から500メートル程離れた所にある。約束は7時だが、10分程早く着いてしまった。

 この辺りは歩いている人が少ない。車道は車がひっきりなしに通るのだが、こんな所でうろうろしていると、見知らぬ誰かが声を掛けて来そうで、ちょっと怖い(こんな怪しい二人に誰も声なんか掛けないか)。

 しかし、7時半になってもGさんはやって来ない。心配になり、弟が公衆電話からGさんの携帯に電話をしようと、この場を離れた。ぽつんと一人でいると、いきなり白い日本車が歩道に乗り上げ、運転席から若い日本人男性が降りて来た。この人がGさんなのか。僕「Gさんですか?」。すると「はい、Gです。どうもすみません。○○通りがひどい渋滞で、遅れてしまいました」。僕「どうも始めまして、弟は電話を掛けに行ってるんで、すぐ呼んできます」。Gさん「そうですか。エンジンかけたままなので、車から離れると盗まれちゃうんで…」。日本では耳にしないセリフだ。

 電話ボックスにいる弟に手招きをする。それにしても、車で現われるとは思っていなかった。Gさん「パリ市内を案内しますよ、どこが良いですか?」。う〜ん、凱旋門やエッフェル塔は行って来たし。「そうだ、新凱旋門が見たいですね」。Gさん「良いですね、行きましょう」。弟が助手席に、僕は後部座席に乗り込む。ずっと歩いてばかりだったので、車で移動するパリというのも新鮮だ。
夜の観光市内巡り
 まず、バスティーユの鉄道跡の高架を改修した建物を案内してくれた。アーチの部分がオフィスや店舗に利用されている。

 しばらく走ると「そこが『ムーラン・ルージュ』です」とGさんが言うので前方を見ると、風車が乗っかっている電飾できらびやかな建物が目に入った。これがあの有名な『ムーラン・ルージュ』なのか。思っていたより小さい。入り口には長い行列が出来ている。『赤い風車』なんていう映画があったなあ、ロートレックの…。それにしてもこの地域、あまりいい雰囲気ではなさそうだ。日本で言えば、歌舞伎町といった所だろうか。最近、旧共産圏から出稼ぎに来ている女性達が多いとか。

 実はGさんは、日本の某大手建設会社のパリ支店の副支店長をされているのだ。弟の先輩なのだが、年齢はGさんのほうが下だ。ということは、僕よりもずっと若いと言う事だ。たいしたもんだなあ。羨ましい。

 どこをどう走ったのか分らないが、またまたしばらく走ると、ガラス張りのビルの前に車を止めた。ジャン・ヌーヴェル氏設計の、カルティエ財団のビルだそうだ。夜なので中のオフィスが透けて見えてしまっているが、昼間ならガラスに風景が反射して綺麗なのだそうだ。カルティエ大好きと言う人は、美術館も併設されているというので明るい時に訪れてみてはいかがでしょう。

 次に向かったのは『リュ・ドゥ・モ
Rue de Meaux集合住宅』という、いわゆる低所得者向けの団地だ。だが、その建物を見るのには問題がある。住民やその関係者しか入れないように、暗証番号を入力しないと敷地への門が開かないようになっている。そのため、住民が帰ってくるなりして、門が開くのを待つしかないのだ。しかもこの19区は、あまり治安が良いとはいえない地域なのだそうだ。びくびくしながら待っていると、親子連れがやって来て門を開けた。すかさず後ろに付いて中に入る。中心に花壇の様になっている広い中庭があり、周囲に集合住宅が立っている。低コストで建てられた建物なのだが、ポンピドー・センターや日本の関西国際空港の設計を手掛けた、「レンゾ・ピアノRenzo Piano)」氏というイタリアの有名な建築家が設計したという事で、国の内外から建築関係者の見学が後を絶たないという。しかし、ここの住民は事情を知らないので訝しがっているそうだ。建物の外壁がレンガ張りになっていて、オレンジ色のモダンな建物だ。ところが、壁をちょっと触ってみたらレンガのひとつが剥がれそうになった。慌てて押し戻したが、低コストなので、あちこちボロが出て来ているのだという。その時、なにやら表の通りから怒鳴り声が聞こえてきた。路上駐車している車が心配だ。日本車は狙われやすいと言うし、ここらで退去する事にした。おお恐ワ

 新凱旋門に行く途中、「ポルト・マイヨー(
Porte Maillot)」のロータリーに車を止めた。ここにある『パレ・デ・コングレPalais des Congres)』という建物も有名らしい。斜めに張り出した外壁が特徴の、面白いデザインの建物だ。弟が車の中から写真を撮る。
新凱旋門の裏は?
 さていよいよ新凱旋門へ行く。地下駐車場に車を入れるが、日曜日の夜のせいか中はガラガラだ。こういうとき、車を置く場所に気を付けないといけないらしい。なるべく他の車が置いてあるところに置くのが良いとか。

 上の階に行く。ショッピングセンターになっているようだが、もうこの時間(
9時を過ぎている)では店も閉まっている。人もまばらだ。トイレに行きたくなり探すが、どのトイレも閉まっている。国鉄の駅に出る。駅員にトイレはどこかと、Gさんに聞いてもらうが、ここには無いという返事。一体どうなっているんだ。と、腹を立ててもしょうがない。

 仕方がないので、地上に出た。目の前に巨大な『新凱旋門=グランダルシュ(
Grande Arche)』がそびえ立っている。う〜ん、でかい。実は10年程前、弟が当時勤めていた事務所の人とパリを訪れた際、まだ工事中だったこの新凱旋門に素知らぬ顔で入り込み、エレベーターで上まで行ったりして、中を色々見て回った事があるのだという。日本人がぞろぞろと入ってきたので、見学者だと思ったのだろうか。それにしても、よくそんな事が出来たものだ。

 新凱旋門の前にドーム型をしたショッピングセンター『パレ・ドゥ・ラ・デファンス
(Palais de la Defense)』があったので、そこのトイレを借りようと入ってみる。中はガードマンが一人いるだけで、がら〜んとしている。しかし、ここのトイレも閉まっていたのだ。諦めるしかない。

 新凱旋門まで戻ってくる。日曜日の夜なのでほとんど人がいない。裏の方はどうなっているんだろうと見てみると、なんと墓場ではないか。近代的なこの建物の隣が墓地だとは驚きだ。

 新凱旋門に向けて立ちションでもしてやるかと思いながら正面に戻ってくると、前方右側にマクドナルドを発見。パリのマックはトイレに入るのに暗証番号が必要で、レシートにその番号が書かれてあると聞いた事がある。しかもその番号は毎日変更されているのだとか。仕方がない、飲み物でも買う事にするか。と、店に入ってみる。ここはたくさんの人で賑わっている。ところが、トイレには自由に入れるようだ。こういうところ、パリの人には見習って欲しいなあ。結局トイレだけ借りて、心の中で感謝しながら店を出た。今度来た時はビッグマックでも買うからね、多分。

 Gさんお勧めのレストランがあるというので、そこで食事をする事にする。ここは、駐車場に戻る前に駐車料金を払う仕組みになっているらしい。自動清算機に駐車券を入れ料金を払う。地下の駐車場に行くと、車はあった。どうやら無事だったようだ。日本では当たり前の事も、ここではサバイバル状態だ。
初めて口にする料理の味
 レストランの場所は「サン・ジェルマン・デ・プレ(
St. Germain des Pres)」付近。ローマ時代の石畳が残っている通りにあって、学生時代によく通った店だそうだ。

 パリの道は路上駐車だらけだ。それも前も後ろもぴったり付けて駐車している。以前から、フランスでは前の車と後ろの車をバンパーで押して出て来るんだ、バンパーはその為にあるんだ、と聞いていたが、まさかと思っていた。しかし、それは本当だったのだ。見ると、ほとんどの車はバンパーがぼこぼこになっている。日本では車といえばステータスシンボル的なところがあるが、ここでは単なる道具でしかないようだ。運良く適当な隙間があったので、そこに車を滑り込ませる。縦列駐車、手馴れたものだ。


 車から降りてそのお目当ての店を探すが、どうも見当たらない。もう店は無くなってしまったのだろうか。仕方なく、開いているレストランに入る。

 こぢんまりとした気取らない、感じのいい店だ。もちろんメニューはフランス語。Gさんに訳してもらうと、ウサギ料理があると言う。日本でもウサギの料理はあるが、特別な料理屋に行かなければ食べる事が出来ない。僕は迷わずそれを注文した。

 まずは、ワインで乾杯。運転は大丈夫?と聞くと、フランスじゃワインでは飲酒運転にはならないよ、との答え。思わず納得してしまう。

 しばらくして料理が運ばれて来た。初めてのウサギ肉、フランスではよく食べられているのだろうか。口にするが、けっこう美味しい。これからウサギを見る目が変わってしまうかも知れない。「おおっ、うまそう」と…。

 花束を持った男の人が、いきなり店に入ってきた。花売りだ。彼女と食事をしに来ている男性は、買う羽目になってしまうらしい。そんなに安くはないんだろうな。彼女の手前、値切る訳にもいかないし。

 食事も終わり、もう夜も遅い。ここもそろそろ閉店の様子だ。ホテルまで、車で送ってもらう。色々案内をしてもらい、食事までご馳走になって感謝感激。お礼を言って分かれる。ホテルに入ると、門限は過ぎていたが玄関は開いていた。部屋に戻ると、Gさんと一緒に写真を撮っていなかった事に気が付いた。この旅行で最も悔やまれる事だった。