ご年始回り
− 平成16年1月4日 −
 この寺昌伝庵では、正月に檀信徒の家を訪問し、お札等を配るご年始回りをしている。
「ご年始」は、年末にお札や暦などを袋詰めして準備しておく。 これを元旦・2日・3日と、
3が日間ご祈祷をする。
 ご祈祷は大般若経理趣分というお経を読むのであるが、この経だけでもゆうに1時間半
はかかるし、しかも、この時季の早朝は氷点下や吹雪などの日が多く、年末の本堂大掃除
や年始回りも同様に、厳寒季の苦労で、手がかじかみ とにかく辛いものがある。

 3が日のご祈祷を済ませると、さっそくご年始回りに出発する。以前は4日からゆっくり
回っていたのだが、小学校教頭でもあり勤務も忙しくなったために、なるべく早く大急ぎで
回らなければならない。
(明日の5日(月)からは学校勤務も始まりだし…。)

 (ちなみに私の年末年始休暇は、寺の大掃除など正月準備で始まり、3が日のご祈祷・行事、
 ご年始回りで終わる。夏のお盆休暇も忙しく、またゴールデンウイークも時期的に法事が多い。
 私の教員としての休日には、プライベートな休暇にできる日は、
 … ほとんどない! )

 25年前、私が修行から戻り自家用車を持つようになってからは、ご年始回りもだいぶ
早い時間で回れるようになったようだが、その前までは、住職夫婦は車も免許も持たない
ために、当時は百軒弱の檀家を、歩いて雪の中を何日もかけて回っていたようである。

 今年(平成16年)の1月3日〜4日は雪が無い非常に珍しい年であり、ご年始回りが
実にスムーズにはかどった。 通常、凍結路面や豪雪・吹雪の中を自動車でとばすには
スピードの限界があり、また雪道での渋滞もありで、例年だとなかなかこうはいかない。
 まだ若干残ってはいるものの、百数十軒のご年始回りのほとんどがなんとか終了した。

 私が修行から戻ってきてからの10年間は、免許を持つ私が車を運転し住職が同乗して
檀家の家を教えてもらいながら回っていたのだが、私が結婚してからは、住職の替わりに
私の家内(以下ヒロミという)が同乗し、(運転は私、ヒロミが配る)ご年始回りとなった。
 運転は、檀家の家を知っており、また雪道運転にかけてはヒロミよりも数倍安心な私が
するほうが効率的であった。
…早いし。 しかし、この役割分担は2年しかもたなかった。

 なぜか? それは、犬がいるからである。不思議と約半分の家には犬がいるのである。
 私は犬は好きである。小学生の頃は、野良犬を飼っており、その犬が数匹子を産んで、
またその子が産んだりして、犬を飼っていた時期があった。昭和30年代は、犬を放し飼い
していても問題なかったので放し飼いしていたのだが、お墓参りに来る人が嫌がるので、
泣く泣く犬を飼うことを断念した経過がある。だから、今でも犬は好きで、苦手ではない。
 しかし、家内のヒロミは大の動物恐怖症である。どんなに小さく可愛い子犬や子猫でも、
一目散で逃げてくるほどである。
 というわけで、雪道の運転はヒロミで
(凍結路もだいぶ上手くなったが)訪問は私になった。
  (もっとも、坊さんがちゃんと玄関に出向いて、お札を渡したほうがいいとは思いますが…。)
隣り合う所では手分けして配ろうと言っても、大抵の家には犬や猫がいるので駄目である。
 家の場所よりも、どこにどんな犬や猫がいるのかをよく知っているヒロミである。

 なお、今日回った家の中に、犬をつないでいるヒモが異常に長く、玄関を訪れる人にまで
しっかりと届き、私が玄関で家人と話をしている最中にも後ろから泥足で背中に跳びかかる
大型犬のいる所があった。
(しかもかなり吠える。) お陰で衣服はドロドロ。( 顔は 笑顔 )
 なぜか、飼い主はまったく制止も注意もしない家だったが、この様子を見ていたヒロミは、
住宅地図のその家に、しっかりと 「犬」 と メモをしているのであった。


   
      ついでに、お盆の棚経読みについて

 お盆になると、ご先祖様が帰ってきている仏壇に、盆供養のお経を読みに訪問するが、
これを棚経読みという。
 まず、この1年以内に亡くなった初盆のお宅を、訪問する。
(ここは歓迎されることが多い)
そして、「棚経に来てください」と頼まれたお宅に訪問する。 
(ここは堂々として行ける。)
あとは、私の場合は適宜である。例えば訪問する道すがらとか、近所に寄るとかである。
 中には、毎年仏壇にお布施を準備しておられる方もいらっしゃって、行かなかったりすると
「待っていたのに…」と、後日苦情の電話があり、慌てて次の日曜日に訪問したりとか…。
そういう家などには言われなくても訪れることにしている。 あとは、適宜気ままにである。

 やはり気まずいのは、頼まれない所に
(とびこみで) お邪魔することである。
 「頼んでもいないのに、なんで来たんだべ。 お布施かせぎだべか?」 
 などと思われることをするのは、気の弱い私にはあまりできない。
 寺によっては、ほぼ全檀家に行くことが慣習になっている所もあるが、ここの寺には
そういう慣習がない。
 だから、頼まれないところには、原則として訪問しないことにしている。

 頼まれれば安心して行けますので、言っていただければ躊躇せずにお伺い致します。



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