砂防ダムと生態系
「山里のあり方、可能性を考える」パネルディスカッションの提起より

 田沢を流れる小樽川本流にも数基の砂防ダムがあり、大荒沢や小荒沢、不動沢などの各支流にも相当数の砂防ダムが建設されています。この田沢地区は特に最上川の最上流部ですから、下流部にも責任を持つということになると考えています。
 砂防ダムは河川の景観や生態系を壊しているだけではなく、海岸侵食、磯焼け、河床低下、骨材(セメントに混ぜる小石や砂)の不足、生態系の破壊など多くの問題を抱えています。特に地区的には河床低下は深刻です。砂防ダムによって、下流に必要な砂や石が流れてこない状況が作られ、そのためにどんどん岩盤が削られて、河床が下がっています。
 結果、橋脚は付け根から削られて、せっかく護岸しても河床が掘られ壊れてしまう。また、農業用水用の堰も河床の低下によって、高くかさ上げしてやらないと水が引けないなどの問題が生じています。砂防ダムによって悪循環がえんえんと繰り返されているのです。税金の無駄使い以外のなにものでもありません。元凶が何なのかを私たちはしっかり見据える必要があります。
 生態系についてですが、砂防ダムによってイワナ・ヤマメなどの魚の移動が遮られています。川の分断は上下流の交流をなくすることになり、結果、渓流魚の近親相姦が進み遺伝的多様性が失われ、絶滅の危険性が高くなってしまいます。
 しからば魚道を付ければ問題が解決するといった意見がありますが、仮に砂防ダムを10尾に1尾遡上できたとすると(通常砂防ダムの遡上率はこんなには良くない)、小大荒沢の場合ですと入り口だけでも3基ありますから、10の3乗ということで1000尾に1尾の遡上できるということになってしまいます。
 イワナ・ヤマメは移動する魚です。小樽川流域に棲んでいる魚も水温の上昇などにより移動をしています。例えば春先は学校の下でも型の良いヤマメが釣れますが、夏以降はほとんど釣れません。ヤマメは水温が22度を越すと生息できません。それで、夏などの水温上昇期には水温の低い上流部へと移動します。
 さて、砂防ダム建設の根拠ですが、流域住民の方の生命・財産や公の道路、橋等の設備を守る為に建設されるわけです。通常の砂防ダムですと、1万と2万立方の総貯砂量ですが、実際に災害が発生をした事例を見ると、長野県の子谷村で96年の12月に死者14名を出した災害では、約10立方の土砂が流失しています。しかし、秋田県鹿角市の登川温泉では、97年に200万立方の土砂流失が合ったにもかかわらず死者などは出ませんでした。土石流が発生した地区には、砂防ダムはありませんでした。このことは流域の住民がダムに頼らない危機管理、安全管理がうまく働いたといえるともいます。
 じゃーどうすればいいんだということですが、現在小樽川の流域にある砂防ダムをオープン型に改良をしていく、つまり、既存のダムにスリットを入れていくのが良いと思います。ダムの最下部まで一度にスリットを入れれば現在堆積しているヘドロなども一気に流してしまい、それでは生態系に甚大な影響を及ぼしてしまいます。そこで、毎年少しずつスリットを入れていく工法がベストなのではないでしょうか。
 すこし、だけ河川についても話をさせていただきます。
川には川原など、浅くて大気中の酸素が溶け込みやすい場があり、微生物の働きによる浄化作用があります。しかし、その貴重な場所は治水や土地の有効利用、護岸工事などにより、コンクリートで固められ、だいぶ姿を消してしまいました。
 機能を単純化し、効率を上げようとして進めてきた人工物化は、本来自然が持っているマルチな機能を担うことができず、その歪みとして環境破壊がここまで進んでしまったのです。
 難しい学説だけでは、なかなか浸透しません。子供たちが川で遊びヤマメを釣るようになれば、結果として川はきれいになるかもしれません。子供たちが遊んでいる川が汚れていて、平気な親はいないでしょうから。子供さんや孫さんをどんどん川で遊ばせてください。

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