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釣行記
朝日山系 見附川釣行記

いつも思う。また行きたい。

                               青 木 昌 智

  これでいいのか 

 今回も1ヶ月前から日程調整に励んだ。7月最終土日を入れて日程を組んだり、8月7・8・9で組んだり、悩みに悩んでやっと決まった。
 私的なことになるが8月8日は初の結婚記念日なのである。ちょうどその日が山行日程とバッティングしてしまった。また、出産を控えた妻を家にひとり残してくることになる。「1回目の結婚記念日からこれでは先が思いやられるね。」(だれか)、「最初が肝心だよ。(最初、行ってしまえばそういうもんだと思うよ。)」(武田さん)、とか「今後はおしめがとれるまでは出歩けないよ。一緒に育ててこそ今後の未来が開けんだよ。(川上さん)」他、どちらに都合がいいのかわからないような言葉を多数いただく。また、妻からは「置いていくのね?どうせ行くなら8月の初旬にしてね。」と駄目押しをくらうが、「どうせ行くなら」という言葉に行ってもいいんだ、と解釈しゴー・サインを出した。これでいいのだろうか?
 これでもうドタキャンはないでしょう。と思ったら、トクさんのために日程をずらしたはずが、トクさんが「あのね。10日にどうしても抜けられない仕事が入っててね。9日に帰るよ。」と言うことであった。武田さんは、「なにそれ、半ドタキャンだよ。」とメールに書き込んできた。私の連絡が送れたのが悪いのです。と自分のミスを書き込んだが(ちょっといい子ちゃんになってみました。)、武田さんは、ドタキャンだと主張。しかし日程をずらしたことによって二日連チャンで飲めるようになり、いい思いをしたのは武田さんである。
8日、車止めでは武田さんが遅刻。トクさん、のざっくん、私とで荷物を分配してパッキングを済ませる。今回もなかなかズッシリくる重さだ。無情にもあと30分待って来なかったら先に行くことを決めた。その数分後、二日連チャンで飲み疲れたような顔をして武田さんがやってきた。
 こんな幕開けとなり、見附川山行が始まった。
 砂防ダムの人手が入った杉林を歩き見附荒沢に降り立つ。荒沢を遡行することもなく、直ぐに対岸の山に登った。ひと山越したところで本命の見附川に降りた。しかしまた右岸に登り踏み跡をひたすら歩いた。時々、トップを歩くが完全に試されている。時々、「あおっくん、どこ行くの?」とトクさんから声がかかり振り向くとみんな上の方を歩いている。
 「あおっくん、おれに原稿書かせたら、何か書くかわからないよ。」
とトクさん。ヤバイ、吾妻渓様が見え隠れしている。自分で釣行記を書くことを決意する。
 トクさんと武田さんがどこから降りるかを川・斜面・地図を見て確認している。トクさんからOKサインが出て、再び見附川に降り立った。
 ここから川通しでの遡行になる。流れ尻に足を踏み込むと岩魚が走る。目指す上流は魚影が濃いと確信した。
 大石の上でお昼を済ませた私達は水晶滝を目指した。
 もうすでに禁断症状が出ているらしい方は、「なんでもないところでやっちゃった。」とへこんだ様子である。カメラを水没させてしまったようである。二日間の酒がもう切れてしまったのかと内心思ったが口には出さなかった。ところで、今夜からの酒の量はだいじょうぶだよなあと心配しながら遡行していると私までが転びそうになった。そうそう私は食担だから食前酒程度を確保していけばいいんだ。確か、会での飲み物は自分の飲みたいものを自分が飲める分だけ持ってくることになっているはずだ。そうそう、それでいいのだと自分に言い聞かせた。しかし、このアル中の方は、たしか〜、飯を食べないでひたすら飲み続ける方だったような、そうするといつまでたっても食前酒となるわけだ。
 「のざっくん、今日、酒どのくらい持ってきた?」
 と恐る恐る聞いた。
 「2リットルだよ。」
 「ふむふむ。おっけい。おっけい。」雨が降って停滞しないことを考えればぎりぎりかなと思いつつ、私も持ってきたからとひとまず安心。それにいくらなんでも自分の酒を忘れる(持ってこない)なんてことはないよね。そこまで期待されていることはないだろう。こんなことを書いていると原稿を書き上げ提出するとチェックが入ることになる。


きのこに笑顔の武田さん 会長のトクさん

 水晶滝でのトクさんルール

 水晶滝に到着、水晶滝は左右の岸壁にぶつかり3段の滝で形成されている。夏岩魚の居場所のセオリー通り、流れ尻である私達の手前に岩魚が群遊していた。
 トクさんがのざっくんに「ルアーを出してみたら、短時間ね。」とあまり粘らないことを前提に促す。のざっくんは手際よくではないが喜んでリールをロッドにセットした。
 みんなで腰をおろしてのざっくんのお手並みを拝見する。のざっくんはスプーンを投げ込む。群遊する岩魚の目の前を通すが、リーダ的存在の岩魚はスプーンなんぞと欺くかのように振り向きもしない。当然ながら外野からああだこうだと罵声が飛ぶ。粘らないことを約束したはずなのに粘る粘る。晩御飯を岩魚寿司と決めていた彼の顔には焦りが見え始めていた。そんなことはお構いなしに行くよと声がかかる。トクさんをトップに水晶滝を軽く高巻く。滝の頭でトクさんが滝下を眺めている。後の下々が到着するや否や、
 「あおっくん、えさ竿、えさ竿」と手を出し、顔は滝下を向けている。何かいるのかと武田さんが覗き込む。いました、いました、50クラス(本当か?)の岩魚4匹が悠々と泳いでいる。我々にその存在を表すかのように水面直下に姿を見せて、しばらくすると深く潜り姿を消していった。のざっくんは「でけ〜」と魚を眺め。中でも一番の大岩魚は白い水晶の衣を纏い、水晶滝の主であることを我らに示している。武田さんの笑みはこれからなんか面白いことが起こると感じさせられた。私は急いでザックをひっくり返して竿を出した。

ここからのやり取りを一部始終、会話文中心でお送りしよう。
 竿を手渡すと、
 ト:「あおっくん、この竿洗ってないね。竿先が出てこないよ。」
 あ:「はあ〜」
 ト:「仕掛けある。」
 あ:「はあ、これでいいっすかっ。」結び目がごてごてで、ついでに板錘のついた仕掛けを差し出す。
 た:「これいつ作ったの?新しい?」あきれ顔で聞く。
 あ:「いやいや、かなり古いです。」
 ト:「すげ〜え、板錘だ。小学校時のハヤ釣り以来だ。これじゃライン切れちゃうよ。新しいの作るよ。」板錘の  存在を再確認したトクさんは苦笑いしながら手際よく仕掛け作りを始めた。おまけにハリスつきの針(ウィーンどころではなかった。)を手渡すと素早く針だけを取り外し、にやにやしながら1号通しの頑丈な仕掛けを作るのでした。針結びの不得意な会員がここにもいたことが発覚してしまいました。(黒澤さん、共にがんばろうね。)
 あ:「なんか、あわてていませんか?」
 ト:「いや、ぜんぜん。」
  仕掛け作りが終わると、唐突のトクさんルールと作戦命令。
 ト:「いいが、一人一匹釣ったら竿交換すっからな。一匹交換だぞ。」と会員皆平等を主張しつつ、最初に竿を握っている。私は画面に納まらない位置からカメラを構える。(片手で、ぐふぁ、)
 ト:「いいが、作戦な。かがったらのざっくんがたぎ下さ回って、タモで取り込むなんぞ。」
 の:「はい。」
 だれもタモ網を持っていないことをみんなが知っているはずであるが、だれ一人としてそのことを口にしない。

 この連携プレーは成功するのだろうか。と思いつつ、このような浅はかな(すみません)ルールや作戦は子どもの頃によく体験していることを思い出した。ガキ大将的な存在者が草野球、魚の追い込み漁や犬やねこを仲間と捕まえる時などに理想的・想像的な発想(作戦)を行う。まして、「成功」という文字を迎えることは少ない。これが本当の“遊び”なのである。なぜか胸がドキドキ・わくわくする。しかしながら、いつまで経ってもこのように童心に戻れることを羨ましいと思うし、そうありたいと願う。
 いよいよ、餌を流し込む。餌を目がけて深みから岩魚が出てくる。反転して餌を銜える。トクさんの竿に大岩魚がかかり、竿先が底に引き込まれていく。足場が悪いというハンディー、なんとか竿を操るがぐんぐん深みに引き込まれていく。一瞬、想像以上の大きさの岩魚が目に映し出される。糸が切れると思ったのざっくん君が手ぬぐいを片手に滝壺に飛び込み大岩魚の尾を掴むがすり抜けられた。その瞬間に糸が切れる。と同時に、手ぬぐいを大岩魚の口に入れ込む。トクさんはテンションを失った竿の反作用で後ろに跳ばされる。やられたと皆が思っていると、のざっくんが滝下水面から顔を出す。この川坊主がにこっと笑って頭上に50を超える大岩魚を持ち挙げている。わくわくさせられる理想である。まさに釣りキチ三平の世界が実現しようとしている。私はここまで勝手に想像を繰り広げていた。
 昨日の酒が抜けていない武田さんはトクさんのそばでルールと作戦を理解しようとしている。
 さて、現実に戻ろう。
 トクさん、1投目。
 ト:「なんか、わくわくする。」
 野崎君はどこから下に降りればいいかをあわてて探している。私はデジカメを構える。武田さんはなにやらにやにやしている。時折大岩魚が姿を表しに浮いてくる。ブドウ虫を気にしているようである。なかなか食いついてこない。あれ?とトクさんは首をかしげている。のざっくんはトンボを捕まえ、羽を半分切り落としトクさんに餌代えをアピールする。「そうかあ」と餌を代えて落とし込む。水晶岩魚は気にはしているがなかなか食つかない。それでも釣り師は釣らなければならないようだ。トンボを踊らせ泳がせたり水面をたたいたりして試行錯誤するのである。かかった。尺上の予備隊が口を使ってきた。大岩魚ではないが尺クラスでも結構竿をしぼる。源流彩の性能を知り尽くしたトクさんが「抜くよ。」と後ろの木の状況を確認している。魚は軽く宙に浮き後ろの木に掛かることなくトクさんの手元に収まった。5メートル上からの尺抜きを見ることができた。トクさんは何ともいえないような笑みを浮かべている。本気で遊んでいたようである。
 大岩魚はこの次のお楽しみに置いといて、水晶滝を後にしてテン場に向かうことにする。
 水晶滝から30分ほど遡行したところにテン場を構えた。先ずは、ビールを流れに浸し後のお楽しみにする。宴会場は砂地になっていてなかなか心地よいところだ。タープを張り、薪を集め、次の行動に移る準備をした。
 あ:「武田さん、焼酎持って来ましたよね。」
 た:「はあ、なに言ってんの。」
 まあ聞かなかったことにして、武田さんをテン場に残して、3人で釣りに出かけた。結果は惨敗であった。(ここでの原稿はのざっくんにお任せ。)








  七夕の夜  
 夜の宴会が始まり、恒例の一番星探しの儀が始まった。トクさんが一番星を探し、トクさんの指さす方向を皆で見た。あった、あったと声をそろえる中、武田さんはなかなか見つけられない。しだいに空が暗くなり、たき火の灯がやわらかく我々の頬を照らす。一番星は織り姫こと白鳥座のベガである。次々に見える星が増えてくる。彦星のわし座アルタイルも姿を現した。
 今日は仙台市の七夕祭りとも日にちがぴったり合っている。
 織り姫星と彦星は結婚してから遊んでばかりいたので、天の神が怒って二人を天の川の両岸に引き離し会えないようにした。悲しんでいる織り姫を見て、天の神が年に一度だけ会えるようにしてやった。そして晴天を祈るようになったのが七夕の始まりとされている。
 渓間に夏の大三角形がくっきりと見えてくる中、ここにいる男四人は何を感じているのだろうか?「ヘッドライト消してみっぺ。」とトクさん、ライトを消し砂地に寝転び空を見上げる。天の川はこの見附川のように穏やかに流れている。ここの男四人はロマンティックに酔いしれている。間違いない。
 そう言えば、トクさんとの山行は2年ぶりだった。忙しい日々をかいくぐり時間をつくって今日の山行に足を運んでくれたのだ。また、トクさん自身が仲間と山で過ごす時に癒しを求めていたのかもしれない。トクさんの笑顔は一時の癒しを感じているようだった。 トクさんや武田さんを前にして申し訳ありませんが、なぜかお二方には気を遣わないで居られるのである。心地よいと言うか自分自身が癒されるというか・・・・・。酒くらいは気を遣え!はい。本当に渓で過ごす時間は心が癒される。現実逃避の世界である。
 ロマンティックに始まった宴会は焼酎が無くてもけっこう穏やかに進んでいた。
 のざっくんが用足しに席を外した時に話はのざっくんの恋愛事情についてと切り替わった。のざっくんが席に戻るとトクさんが
 「こういう星空で女の人を脇に愛を語るんだよ。」
 とアドバイスしていた。
酔っぱらってよく覚えていないが、のざっくんは、
 「インターネットを今月中に入れます。ついでに、気になる女(ひと)がいるので、今月中に告白します。」
 などと武田さんに宣言していたっけ。「ついでに」が逆だった。
 「できることならもう一度(ちがう人と)結婚してみたい。」
 と言った言葉も別な声で聞こえてきた。本人は酔っていて言ってしまったこともわからないだろう。
 「そろそろ焼酎出していいよ。かくしているんでしょ。」と武田さん。
 「明日は岩魚寿司が食べられるんだよね。」
 とまとまった話がされないまま夜が更ける。
 さて意地悪して、上記の言葉を言い変えよう。みなさんは実はこのように流れ星にお願いしていたのだ。
 「生きた政治が実現しますように。」
 「夢の中でもう一度だれかと結婚できますように。」
 「あの女(こ)がおらの彼女になりますように。」
 「丈夫な子が生まれますように。」 (誰の台詞かは自ずとわかるはずだが・・・・・。)
  みな次第に気分が良くなる。
 このように渓での行動やいろいろな会話などを通して、ひとつひとつ我という人間があばかれて行くのである。
 武田さんの言葉を借りれば、「渓で2,3回夜を共にすれば、その人間というものがどんな人かわかる。」と言う。
 松島さん、幸助さん、須藤さん、黒澤さんとも過ごしてみたいな、渓夜の世界。(実現したらちょいと恐ろしいかな。)   

  岩魚止めの滝を釣る。
 翌朝目覚め抜群。朝飯を済ませ、私たちは足回りの準備を始めた。しかし、トクさんはこの日で下山である。どんぶらこと流れに乗って下るか踏み跡を確実に歩くかを選択中である。単独での下りであるので、武田さんは踏み跡を下山した方がいいのではないかと勧める。
 お互いの安全を祈って挨拶を交わした。トクさんの背中を見送り私たちも上流へと足を運んだ。昨日に釣り登ったところまでのざっくんが軽快に先行して行く。のざっくんはルアーロッドを出し釣り上がって行った。しばらく遡行してから私もテンカラ竿を振った。
 昨日、不発だったのざっくんに尺上の岩魚がチェイスしてくる。その後コンスタントにルアーロッドを絞っている。 「福島での単独釣行ではこんないいサイズ釣れないですよ。」
 とのざっくんは武田さんのカメラを向き、岩魚を手にするたびに満足げな笑顔である。そろそろ私も釣りたいなと先行させていただきテンカラを振る。トクさん作の黄色のテンカララインがすうーっとふけを無くし水面で一直線になった。尽かさず、あわせを入れた。私にはかわいらしいおチビちゃんが釣れた。毛鉤を銜えた岩魚はどこか愛らしい。私もコンスタントにオチビちゃんを釣って、ばらして、リリースして、ん〜満足。
 空身ののざっくんを先頭に釣り登っていくと滝音がしてきた。岩魚止めの滝に到着したのである。私はテンカラ竿から餌竿にチェンジすることにした。野崎君はルアーケースの中からベストチョイスをしている。武田さんがカメラを準備しながら「まだ入れないでね。どっち先にやるか決めた?」とジャンケンを促した。しかし、のざっくんはここまでの釣果に満足なのか、私に快く先攻を譲ってくれた。武田さんからOKの合図が出た。先ず一投目、岩にへばりついている岩魚魚を狙った。餌に喰らいついてきたのを視認して合わせを入れた。しかし、速すぎて空振りに終わる。次は逆の流れに流し込む。目印がぐんと落ち込む。尽かさず合わせを入れる。のった。竿もぐんぐん引き込まれる。ついにきたか!大岩魚!と思ったが岩魚の抵抗はここまで、尺上の岩魚が姿を見せた。しかしながらいつも思うことであるが、一般的に尺岩魚といえば大岩魚であるがこのような滝壺に竿を入れるともっと大きな岩魚が潜んでいるはずであると思ってしまう。そして、大岩魚であるはずの尺岩魚に満足できなくなってしまっている。完全に麻痺しているのだ。かといって、大岩魚を釣ったからどうだということもない。でも釣ってみたい。そこが釣り師のエゴなのかもしれない。
 次はのざっくんがルアーで挑戦する。滝の流れを緩いU字でトレースする。一度に3匹くらいの岩魚がチェイスしてくる。のざっくんも尺上岩魚を釣り上げ大満足のようだ。見附川の岩魚はそれぞれ個体に特徴を持っているようだ。私は色や模様など3種類ほどの特徴を掴むことができた。武田さんも岩魚がルアーを追う姿を見て、ルアーロッドを振るが思わく通りに行かない様子である。
 このような魚止めの滝を前にするとなぜかその場で大物が釣れるまで粘ったり、深追いしたりすることがなくなってきた。ここで1匹釣れて満足してしまう。源流行を重ねることでそういう自分になっていることに最近気づき出した。なぜなのだろう?自分でも分からない。
 今回の釣行は癒しを求めての釣行だった。渓でほろ酔い気分で酒を飲むのもまた楽し、仲間が魚を釣って大笑いしている姿を見るのもまた楽し。しかし、渓に岩魚が居なかったらこれは悲し、重大なことである。
 大笑いできる人たちに囲まれて渓に同行できることを幸せに思う。今度はでかいのを釣ってのど○んこを見せて大笑いしてみたい。
 3人で岩魚止の滝をバックに記念撮影をする。みな満足げに大笑いし、しばし滝の水音がかき消されてしまった。
 やっぱり、山や渓は生きています。いつも思うことだが一度行ったところにまた行きたい。(あおき まさとも)




追伸 台風多し
 今回の山行前に台風15・16号が上陸して大きな被害をもたらした。ダムの排水も大きな原因と取り上げられているがはたしてどうなのだろ。また、この台風はどのような悪影響を残していったのだろうか。
 台風は自然現象である。しかし被害として取り上げられるのは人間が作ったものが原因となることが多い。
 金目川山行に行ったときである。もちろん、意味もない大規模林道が途中までできた後である。遡行するにしたがい普通であれば川底から砂がなくなっていくはずであるが、大岩のある源流域にも異常なくらい砂が多かったことを覚えている。これは山肌を大きく切り刻まれたところからも多かれ少なかれ砂が流れてきているだろうと疑わざるを得なかった。実際、大規模林道は破壊されてきていて、道路上に土砂が流れこんできているという。
 その結果が堰堤に溜まった土砂である。大規模林道工事が始まってから急激に増えたのであろう。また、その後、最上流の砂防ダムにスリットが入れられた。砂防ダムに砂が埋め尽くされたからだろう。どう考えても悪循環である。スリットも中途半端なもんだ。砂を流してやり、隠す為のスリットなのだろう。
よく考えてみると台風がもたらした悪影響ではないのである。悪は意味のない大規模林道だ。作られる前に阻止できなかったことを悔やむばかりだ。