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 釣行記

No.52-1 特別寄稿荒川マッタリ釣行記

「釣り師」と「飲み師」の珍道中

向井 孝治/丸山 尚代  
(根がかりクラブ)  


Part1向井 孝治

 我会の兄弟会である群遊会の年間計画に5/4〜6三面川本流と書いてあるのを私は見逃さなかった。三面川本流で大物を狙い、小屋に泊まってのんびりとするのも悪くない。
 そしてGWに事務長の我妻さんからメールで誘われると、餌を待っていたイワナのように何の戸惑いもなく食らいついてしまった。根がかりクラブからは、丸山尚代さん、曽野部と私の計3匹である。全員の日程が合わない為、先発隊(5/18〜20)は武田さん、佐藤さん、斎藤智志さん、曽野部、向井となった。
 5/17(木)夜9時30分東京出発 曽野部と合流し快調に走っていると、武田さんから電話が入った『佐藤さんの親戚の人が急に体調が悪くなり、欠席するとのこと。2泊3日で行く予定だったが、我々も(武田さん、斎藤智志さん)土日組と一緒に行ってもいいか』とのことであった。三面川は私も曽野部も行ったことがあるので『道も問題ないし、小屋にも泊まったことあるので大丈夫ですよ』と言って明日は2人だけで“爆釣だー、1、2、3、だー”とかいいながら気合を入れて三面に向かうのであった。
 根がかり斎藤さんから去年9月末に行った時、蕨峠越えは今年から通行止めと看板出ていたぞ、と情報をもらっていたので村上市側から入る事とする。
こけちゃいました。
曽野部 勝啓さん
ちっこいネ
斎藤智志さん

 5/18(金)朝5時45分 三面ダム到着、観音島の横になんと直径10cmの鉄棒でできた頑丈なゲートがあるではないか。
 これでは入れない。管理人が来るのが7時だそうなので一眠りする。トラックの音で目が覚めると7時15分になっていた。管理人にゲートがある訳を聞いてみると、除雪と道の整備だそうだ。「三面小屋で待ち合わせしているのです。入れてください」と言うと『これより先は一般車を入れるわけにはいかない。オイラが首になっちまう』と言われてしまったらしょうがない。小国町に回り蕨峠を行く事にする。
 8時40分 斎藤さんから聞いた情報が気になったので、直接小国町役場で通行できるか確認してみる。結果は蕨峠の下った所から道路工事で通行止めなのだが、はっきりと現場の状況がわからず車が通れる幅があれば通っていいそうである。(小国町役場の担当者が朝日村役場に電話で聞きようやくわかった。蕨峠頂上から北は朝日村なので朝日村の管轄になる。何ともややこしい)
 通行できれば三面川に行くことを武田さんのメールに送る。(役場から5kmも走ると携帯は電波が入らなくなる為) 9時50分 蕨峠を下りきったところに橋があり、まさに工事のまっ最中であった。しかも開閉式のゲートを溶接で作っていた。工事のオジサンに通れるか聞くと『入口に通行止めの看板あっただろ!』と逆に怒られた。役場で聞いてきたと言うと更に『うちらは県に依頼されてっから、村は関係ねーよ!!!』と言われさすがにムッときたが、道には工事の鋼材、工具、発電機等が有りこれは確かに無理だな、と思い三面川は諦めて引返すことにする。蕨峠の上りを運転する曽野部は、興奮高まりぶつぶつ言いながら(ヘタクソ!ラリードライバーのように)爆走し、とても安心して乗っていられなかった。
 10時50分 女川山越えルートの林道入口で、武田さんに電話して事情を告げると松島さんがこの辺は詳しいので話してみるとの事であった。会長の松島さんと地図を広げながら話し、時間も無いので近くで良さそうな所を幾つか教えてもらう。後発隊と確実に会える荒川本流、角楢小屋に変更することとする。
 林道終点の針生平に車を止め12時30分ようやく歩き出す事ができた。まだ5月なのに、梅雨明けでもしたかのような青空は雲ひとつなく、半袖でも暑く夏の陽気である。道に迷う事も無く順調に進むと1時間で角楢小屋に着いた。
 あまりの暑さで2人共バテ気味になり、めずらしく直ぐに釣る気になれない。小屋の日陰で昼食を取りながら、地図を見て何処を釣るか考える。結局、時間も無いので小屋下から釣ることにする。水量は多く6m竿でも短い位だ。淵や小さなたまりなど好ポイントがあるのだがアタリは無い。大淵の手前で曽野部が掛けたが惜しくも手元でバラシてしまった。(私にはハヤに見えたが曽野部はイワナだと言い張る)大淵は、高巻きか泳ぐしかなく本流はアタリも渋いので角楢沢を30分だけやってみる。15分程釣り上がると雪渓になるが、上を越え更に奥へと釣り上がるがダメであった。
 ボウズは久しぶりで、2人共凹み気味であった。夕飯を食べながら明日は上流に行けば釣れるだろうか?いや今日ほとんどアタリ無かったからヤバいんじゃないの。「明朝、車止めまで戻って皆を待ち女川に変更させてもらうべとか。」釣り師の浅はかな思案が頭をもたげた。
ふと見上げると、一面に星が広がりとても綺麗だ。横になって暫く見ていると己の小ささを思い知らされる。釣れなかったことなんかどーでもよくなってしまった。明日があるさ。皆に久しぶりに会えるさ。
ここまで (むかい こうじ)
 Part2  丸山 尚代
5/19(土) 晴れのち雨のち曇り
 会社の休みを取れなかった私は、向井君、曽野部君より1日遅れで、高速バスに揺られて早朝米沢へ到着する。ベンチで待っていると、5:00過ぎに我妻さんが迎えに来てくれた。松島さん〜斉藤さん〜武田さんと順次合流し、先行2人が三面から転進した荒川へと向かう。
 荒川沿いの林道終点にある駐車スペースに車を停め、7:40出発する。道は新緑で眩しいくらいのブナの森の中を通り、ワイヤーの橋を渡ったりと変化を交えながら、たいしたアップダウンもないまま、小一時間ほどでカクナラ小屋へ到着する。小さな三角の小屋の中を覗くと、懐かしい2人の顔があった。ホッとして笑顔がこぼれる。大変だったね。
 小屋の前でひと休みしながら、皆、久しぶりの再会に話が盛り上がる。その輪の中心で、松島さんは既にお酒を飲み始めている。武田さんにいたっては渓流靴を持って来ていない。酒飲みマッタリ組が編成されつつある中、揺らぐ気持ちを押さえ込み、釣り組に加わる。
 登山道を暫く進み、下りやすそうなところからヤブを掴んで荒川へ降りる。向井君・曽野部君・私の3人が竿を出す。まだ私と曽野部君が仕掛を付け終わらないうちに、向井君は1投目を投げ入れ、24cmを釣り上げた。むむっ、本物の釣り師だ!あまりの早業に本当にびっくりした。
 私たち3人が釣りをしている間、沢歩きは今回が初めて(2回目?)の群遊会の斉藤さんは、山菜採りを
登山道の途中でヒラタケを見つける。
している。我妻さんは両方にガイドをして、あっちへ行ったりこっちへ来たり忙しそう。
 荒川は明るく開けた谷で、釣りをしていて気持ちがいい。居そうなポイントでは釣れず、「?」と思うところで釣れたりして、それはそれで楽しい。雪代で流れが強く、何度かスクラム徒渉をしながら釣り上がる。曽野部君は3人の中で一番大きな31cmを釣り上げ、大満足で途中から竿を仕舞っていた。ふと気が付くと、竿を借りて試しに投げ込んだ斉藤さんが小振りのイワナを釣り上げていた。斉藤さんにとっては生まれて初めてのイワナ釣りだそうだ。皆それぞれに満足の様子。 曇り空から雨がポツポツ降り出したので、12:00頃切り上げることにする。大玉沢出合まで戻って登山道に乗り、雨足が強く
コシアブラを採る
なって来た中、コシアブラやウドを採りながら小屋へ戻る。松島さん・武田さんは酔っ払って小屋の中で大の字になって寝ていたので、古い小屋の方を片付けて宴会の準備をする。ビールを飲んで一息ついた頃、武田さんが起きてきた。我妻さんがコシアブラとウドの天ぷらを揚げてくれるのを、次々と頂く。武田さん自家製のレバー醤油漬けもまた絶品。
 暫くすると雨が上がったので、外に場所を移すことにする。松島さんも起き出して、全員で再び乾杯!焚き火にも火が点き、それぞれ料理の腕を奮う。キープしたイワナ3尾のうち、1尾を刺身、2尾を餃子にする。我妻さんと武田さんがお互いの餃子の形をけなし合いながら作ってくれたイワナ餃子は、初めて頂いたが美味しかった。宴会は盛り上がり、夜はゆっくりと更けて行った。
5/20(日) 曇り
釣り師はきわどいヘツリ
 7:00頃次々と起き出し、小屋の前で車座になる。曽野部君が入れてくれたコーヒーに余っていたブランデーを入れてしまったら、もう動く気がしない。釣る気満々の向井君・曽野部君と、シブシブ腰を上げたサクラマス疲れの我妻ガイドは、昨日切り上げた少し上流へ釣りに出かけて行った。残った4人で飲み続ける。斉藤さんは途中でウドを採りに出かけて行き、ついに、ふるいに掛けられたように酒飲み3人が残された。深い森の中で流れていく時間は、周囲の様々な気配を取り混ぜてゆっくりと私たち3人を包み込んで行く。その中に全身でくるまりながら、何の不安も感じずに酒を飲めることが、とても幸せだと思う。
 そんな小さな幸せに浸っていると、お昼頃、釣り組が戻って来た。水量が多くてマス止めの滝より先へは行けなかったそうだが、釣果はボチボチだったようで、釣り師2人はそれなりに満足そう。
 釣り組にはご飯、酒飲み組にはソバでお昼にする(酒飲みにソバという気遣いが心憎い)。お腹も満たされたので、荷物をまとめ、小屋を後にする。コシアブラを採りながらフワフワ気分でのんびり歩くと、やがて車止めに到着した。
 すぐ横であれだけ2人に釣られると、のんきな私もさすがに焦り出し、釣らなければ!というプレッシャーに生まれて初めて襲われました。これがきっと上達して行く上で大事な事なのでしょうね。今後は精進致します。
 最後になりましたが、群遊会の方々、釣行に快く加えて頂き、ありがとうございました。マッタリ釣行でしたが、釣りが出来て、楽しい仲間とお酒が飲めて、美味しい山の恵みを頂いて、私は大満足でした。三面の残雪のブナたちに会えなかったのは残念でしたが、またの機会にお願いします。(まるやま ひさよ)


※分類
飲み師 松島.武田
釣り師 向井.曽野部.我妻
中間派 丸山.斎藤

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