「か」さんのコンサート体験記そのAです♪
コンサートに行きましたー報告(その2)
須田真美子コンサート・ソサエティ 主催
須田真美子 ピアノリサイタル
2005年10月14日(金)19:00開演
伝国の杜 置賜文化ホール
プログラム
@ハイドン ピアノ・ソナタ第52番 変ホ長調 Hob.]Y
Aシューベルト 即興曲 op.142-2 変イ長調
ピアノ・ソナタ 第13番 イ長調 op.120
Bショパン バラード 第1番 ト短調 op.23
第2番 ヘ長調 op.38
第3番 変イ長調 op.47
第4番 ヘ短調 op.52
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須田真美子(敬称略)のコンサートの、自分の思い出といいますと、数年前のチェ
コフィル弦楽チームとの室内楽、そして、その前の高畠でのピアノソロ、もっと前の
高畠でのチェロとのデュオ。記憶にあるその細かい内容の全てはここには書き尽くせ
ませんが、モーツアルトのピアノソナタイ短調第1楽章の16分音符が長く続くフレー
ズ部分の、何とも流暢で淀みなく、まるで白く輝く上等のシルクのドレスの滑らかな
線を見ているような感覚、ベートーベン「月光ソナタ」の気高さ。細かい技巧では、
オクターブ奏法の時、ほんのわずか、気が付くか付かないかの微妙な上の音の先行に
よる、高音と低音それぞれが調和しながら、しかも双方とも綺麗に歌って聞こえる効
果などなど・・・。いったいどういう練習・修行を重ねるとここまで素晴らしい演奏
ができるようになるんだろうと、天上に美しく輝く月を「とってくれろ」とせがむ子
どものような心境になったり、ただただ畏敬の念を持ってしまうというか、もう、思
考も言葉も感覚も簡単にはまとめられない程で・・・。そんな期待を抱いて今回のピ
アノリサイタルを聴きに、万難を排してでかけたのでした。
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優雅な仕草で須田真美子ステージに登場。ピアノにそっと左手を添えてご挨拶のお
辞儀(何か、ピアニスト1人の挨拶というより、ステージのピアノと一緒にご挨拶と
いった感じだね)。
まず、ハイドンのピアノソナタ。作曲された時代背景のせいか、ハイドンには鍵盤
楽器奏者への思いやりが欠けていたのか、装飾過剰なフレーズに満ち満ちたピアノ
曲。でも須田真美子は弾きこなしてしまう・・・。まるで、伝国の杜のピアノと、ハイ
ドンをしっかりと“調教”しているかのように。あのロンド形式の3楽章最初の連打
の意味付けも素晴らしいこと。
次に、シューベルト。このピアノソナタはシューベルトの作曲技術がちょっとショ
ボかった頃の作品なのでしょうか。1楽章の展開部のあっさりしたこと・・・。3楽
章のワルツの混入の何だか唐突なこと。でも、これまた須田真美子は部分、部分で雰
囲気を変えて弾きこなしていましたね。
休憩の後には、ショパンのバラード全曲。その中で最もおなじみの第1番。ジーン
と来ました!しかし、演奏を聴いていてもっと凄いことがおきたのは第2番から。
すっかりピアノの音に魅せられて、音に体全体が包まれているような感覚に陥って、
体がとても心地よく温まってきて(まるで、寝ている時の赤ちゃんのぬくもりみたい
に)、でも頭はしっかり冴えていて、ひたすら「音」に引き寄せられていて・・・、
自分の体全体が耳になってしまったような、本当にトランス状態(催眠状態)に入っ
ている自分を自覚しました。こんな体験は初めてです。そのトランス状態は、4番の
バラードの最後まで、絶えることなく続いたのでした。凄い!これが「音楽」の真の
力なのでしょうか。もはや、この演奏は名人芸ではなく、神業と言ってもいいよう
な・・・。そしてこれは、技巧的な「凄さ」のレベルとは質的に違うものでしょう。
でも・・・、です。プログラムにちょっと違和感が・・・。シューベルトの即興曲変イ長
調と、その後のピアノソナタのイ長調の半音分ずれた続き方に何だか違和感を覚えま
した、少なくても自分には。この指摘はちょっと生意気でしょうか。即興曲の方は、
アンコールで演奏してもよかったように思いました。
ともあれ、かくも素晴らしいコンサートを主催された裏方の皆様にも、厚く感謝申
し上げる次第です。(文責は「か」)