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 釣行記

朝日山系 見附川

まさにお(岩)魚天国

野 崎 浩 幸


 今年は、昨年の冷夏とまったく逆の猛暑の夏となっている。毎年の事であるが、私が気兼ねなく山に入って遊べるのは、教員採用試験が終わってからである。したがって、昨年に引き続き今年は何処の源流に行こうか青木君と話をしていました。候補として八久和・三面・湯井俣とあがりましたが、私の技量を考え見附川に決定しました。メンバーは群遊会会長の我妻さん、事務局長の武田さん、そして今回の食担に抜擢された青木君と野崎の4人である。残念ながら我妻さんは1泊2日の参加だが私にとっては初めての同行なのでたいへん光栄である。

 私は福島なので、朝5時にアパートを出て、青木君の所へ向かいました。そして7時に我妻さんと待ち合わせの長井市役所へと向かうともう既に我妻さんの車があり、挨拶もそこそこに武田さんとの待ち合わせ場所である見附の車止めまで移動しました。予定より少し早く待ち合わせ場所の車止めに到着し、武田さんを待つがなかなか来ない。昨夜飲み会があるので今日の集合をゆっくりにしていたわけだが、もしかして?との不安がよぎる。我妻さんが「9時30分になっても来なかったら、出発すんべ。道は解っているから大丈夫だ。」と言っていたら遠くから車の音が!ギリギリセーフで武田さんが間に合った。聴くと「久しぶりに来たら道間違ってさ、ずっと上の道走ってて引き返してきたよ。」とのことでした。道を間違ったのは久しぶりだったからか、それとも二日酔い?のせいなのか。普通ならここで荷物の分配をして出発となるのであるが、武田さんが遅れたこともあって我妻さんと青木君と私で必要な荷物をザックに詰め込んだのですが、3泊分の食料とお酒が簡単に納まってしまったことに疑問?というか不安が起こらなかったことが後の悲劇につながるとは…詳しくは後ほど。何はともあれ全員集合4人そろって出発となりました。

 見附ダムのバックウォーター沿いの踏み後を私が先頭で進み、見附荒沢を渡り、さらに、見附川を左に見やりながらの山道となったのですが、ちゃんと踏み後が残っている場所は問題ないのですが、ちょっと分かりづらい曖昧な所があるといつの間にか道をはずれてしまう。途中、二股に分かれている踏み後があり私は迷わず左側に下る道を進んだわけだが、我妻さんが首を傾げてる。そこでちょっと休憩。我妻さんが武田さんに「踏み後違うんじゃないか。」と目で合図を送っている。それを察して武田さんが動き出し、「上にあった」、「やっぱりな」と。おかげさまで要らぬ回り道をせずに済みました。(長井秀和風に…素人は自信を持って道を間違える。注意しろ!)その後も、何度となく山道を踏み違え、修正しながら進んでいったがいっこうにペースが上がらない。見附川を一度渡り左岸の踏み後に入ってしばらくすると、それまで黙って後ろに付いていた我妻さんがとうとうしびれを切らし先頭に立って歩き出した。すると途端にペースがあがり、それまで先頭を歩いていた自分がアッという間に最後尾に追いやられてしまい、付いていくのもやっとで心臓も爆発しそうになった。どうなふうに歩いたらあんなにスムーズに歩けるのか?今度そのテクニックを盗まなければならない。

 幻の水晶大岩魚

 13時頃ようやく山歩きが終わり見附川の川床に降り立ち、そこで遅い昼食となった。時間も遅くなったため、竿も出さずとりあえずテン場に到着しようと川沿いを遡行していくと、見るからに大岩魚が住んでいそうな水晶滝が目前に現れた。さすがにここを素通りすることはできず「野崎君竿出したら。釣れるよ。」と我妻さんに言われ竿を出すことになった。実は恥ずかしながら、私はテンカラはもちろん餌釣りもほとんどなしたことがなく、ルアー専門で釣りをしています。それもあって、遠くから狙える私が竿を出したのですがまったくアタリは無い。「岩魚はお留守。」とあきらめ右岸を高巻くと、先頭の我妻さんがなにやら興奮している。「オオ!いるいるでかいのが!50cm」。顔は笑っているがちょっと引きつった表情で「竿!竿!」と青木君に餌竿を出すように催促している。我々も上から水晶滝をのぞき込むとまさしく50cmクラスをはじめ、40cm前後の岩魚が遊んでいるかのように群遊しているではないか。釣り師の血が騒いだ我妻さんは、すばやく仕掛けの準備を整えると唐突に、「じゃあ作戦な!俺が釣ったら野崎君が下流にいって網で掬うでいくぞ!そして、一人一匹ずつ交代な」。一同「キョトン?」。思わず私も「ハイ」といったものの網?何処?だれも持っていないぞ。そのくらい我妻さんも興奮していたのだ!作戦?も決まりいよいよ餌を流して水晶大岩魚を狙うが、期待とは裏腹に餌にいっこうに見向きもしない。「餌が悪い」とトンボに変えるがそれでもダメ。苦笑いをする我妻さんだったが釣り師としてこのまま引き下がれぬとあの手この手で誘いを入れると、ついにヒット。しかし、ねらいの水晶大岩魚ではなく、尺上の岩魚であった。残念そうな面もちでおもむろにごぼう抜きし、やさしく放流。水晶大岩魚は釣れなかったが私が初めて目にした大物に感動し、今後の釣りを期待させるには十分であった。

 水晶大岩魚に心残りはあるものの時間も無くなってきたこともあり、テン場まで急いだが川通しを進むと足元から岩魚が走り出す。この魚影の濃さには驚きだ。ようやくテン場まで到着し、我妻さんの指示で武田さんと私でタープを張る。青木君はビールを冷やす。これを忘れちゃならない!その後、青木君と今晩の焚き火の薪を集めていると、我妻さんから「時間がないから釣りに行くよ。」と言われ、3人で今晩のおかずを調達に出かけた。実は、今回の山行で食担の青木君から「何が食べたい?」という質問があった。私は源流関係の雑誌で美味しそうに寿司をほおばる写真を見て、一度食べてみたと思っていたので迷わず「岩魚寿司!」と答えていた。したがって今晩のおかずには「岩魚寿司」用サイズの岩魚を調達する必要があった。それに川通しであれだけ岩魚が走るのを見たら、楽勝の釣りと思って出かけた。テン場付近からさっそく竿を振りはじめ上流に向かって進んだのだが、アタリが無い。岩魚は見えるし足元から走ったりもしている。しかし釣れない。
 結局、我妻さんがテンカラで1匹、青木君が餌で1匹、私は邪道なルアーで0匹(ボウズ)という結果で終わった。夢の岩魚寿司は無理になったが、川の恵みのありがたい2匹の岩魚を刺身にしてお楽しみの宴会のスタートである。
 ビールの栓を開け、コップに並々そそぐ。「お疲れ様でした。カンパーイ。」「グビィ!グビィ!」「プハァ〜!」「うんまい!」これだから渓でのビールはやめられない!さっそく食担の青木君の指示にしたがって私は揚げ物を担当する。武田さんが山道の途中でとってきた乳茸を天ぷらで揚げ軽く塩をつけていただく。始めて食べてみたがなるほど旨い!やめられないのがよく解る。楽しい宴会も進むなか、今日の釣りの話になり水晶滝での我妻さんの作戦の話題で大いに盛り上がった。そして、今日の岩魚の渋さに「天気も良くて水温も高かった夕方の釣りは厳しいかった。」という結論になった。しかしボウズだった私のルアーアクションに付いては我妻さんからマル秘テクニックを伝授してもらったので、早速明日ためしてみたいと思う。

 ここで悲劇が!

 旨い料理!旨いビールをいただいて皆、上機嫌になりそろそろ違う飲み物となったときに、
「麦は麦でも焼酎は?」と武田さん。
「飲みたい飲み物は各自好きなだけ持ち込みで」とメールに書いたと思いますが?と青木君。

 なんと私と青木君が準備したビール・梅酒・ワイン・日本酒以外の飲み物は無かったのだ!愕然とする武田さん。みるみるテンションが下がってしまった。源流でも釣りより大酒飲みで名高い、そして食料よりアルコールを望む(そんなことは無いと思うが)群遊会に焼酎やウイスキーがないとは何ということか!どおりでザックに分けて入れる荷物が武田さんに無いくらい簡単に納まってしまったわけだ。やっぱりパッキンするときにみんなで荷物を確認すべきであった。しかしもうあとの祭りである。仕方なくちびちびと飲んでいる武田さん。大変申し訳ない事をしてしまった。いいわけになるが事前準備で、「焼酎やウイスキーを用意しなくていいのか?」と話はしていたのだが、「好きな飲み物は持ち込み」と連絡したから持ってくるだろう?とのことであまり気にもとめていなかったのだが、それがこの様な結果となってしまった。これまで諸先輩方にお世話になり今回の山行で楽しんでもらおうと思っていたのに、肝心な“アルコール”が無いことには話にならない。あらためて大変申し訳ありませんでした

 そんな悲劇がありながらもお酒を飲み、美味しい物を食べおなかいっぱいになった頃、夜空を見上げると数えられないほどの何千という“星”が輝いていた。一同思わず感動し、センチな気持ちになったのは私だけではないと思う。ここで恒例の廃油ランタンの登場である。ロマンチックな雰囲気作りには、やさしい光の廃油ランタンが一番である。そんな夜が過ぎた。続く。

 2度あることは3度ある

 次の日、目が覚めたら青木君が昨夜の焚き火を起こし朝食の準備をしていたので私は目覚めのコーヒーを入れた。我妻さんは昨日の水晶滝の50cm岩魚が忘れられず、早朝ねらいに行くつもりだったようだが断念したようだった。私には朝から大事な仕事があった。それは何かというと飯炊きである。昨年も梵字川支流の小沢で2回飯炊きをやったがことごとく失敗して焦がしてしまった。リベンジだ!何しろ今回は釣りも料理の腕前も一級品の会長我妻さんがいる。これこそ鬼に金棒である。

 我妻さん「水は多めでいいよ。」
 野崎「はい。これくらいでいいですか?」
 我妻さん「OK!後は火の立っている強火の所へ置くんだよ。」とニコニコ。
 野崎「はい。この辺ですね。」(でもどのくらいの時間焚くのだろう?)
 我妻さん「よけいな水気は吹き出しちゃうから。そのあと蓋を箸でさわってコトコトいわなくなったら熾き火に移すようにね。」
 野崎「なるほど!(蓋を箸でさわってみる)まだコトコトいうな。」(成功させるぞ!)
 我妻さん「炊きあげて蒸らしまでしっかりね。」とニコニコ。
 野崎「炊きあがったかな?蒸らしに入ろう。」と熾き火から下ろす。(いい感じだ。)
 青木君「焦げ臭い! _(._.)_ 」と一言。
 野崎「え!」蓋を開けて臭いをかぐと本当に焦げ臭い。(やってしまった。)
 我妻さん「・・・」ニコニコしてはいるが、目が「センス無し」と語っている。

 今回の挑戦もまた失敗に終わった。2度あることは3度あるのである。もう飯を炊くことは無いだろう。
 飯炊きのセンスが無いことは判明したので気を取り直し、今日の行動について確認した。もともと我妻さんは2日間の予定だったので、残念だが帰るとのこと。そして我々は岩魚止滝まで詰め上がることにした。我妻さんの下山を見送り、我々も出発した。昨日釣った場所まで進み、そこから竿を出しながら釣り上がっていった。昨日腕の未熟さを露呈しボウズで終わってしまった私は、早速我妻さんに伝授されたマル秘テクニックを試してみるといきなり尺サイズが釣れてしまった。さすが達人のアドバイスは効果てきめんでその後も尺から尺2寸サイズが面白いように釣れてしまった。我妻さんに感謝である。青木君のほうは、まだ不慣れながらテンカラ竿と我妻さんからいただいたテンカララインを振りながら、同じように尺サイズを釣り上げている。今回武田さんは竿を出さずにカメラマンに徹していて写真を納めていた。いつも「俺はいいから釣って」と我々に譲ってくれている事務局長には本当に頭が下がる思いである。そして青木君は慣れないテンカラについて解らないことを武田さんに聞いてアドバイスをもらっていた。ん〜研究熱心な男だ。本来であれば、私も餌釣りかテンカラ釣りをしたいのだが、釣り始めがルアーだったのでなかなか他の釣り方に移れないでいる。ただ、青木君にテンカラ竿の購入をお願いしているので来年テンカラ釣りをしようと考えているのである。そうすれば正当な源流釣り師の仲間入りができる、かな?(そうすると私の腕ではますます岩魚が釣れなくなるな。)

 しばらくすると、見附川とオバラメキ沢との出会いに到着した。通常であればここの淵で泳ぎがあるのだそうだが、この猛暑で渇水気味のため“泳ぎ”までにはいたらなかったので助かった。

 気持ちよく釣り上がって来たがそろそろお腹が減ってきた。時計を見ると13時を回っていたので手頃な場所で昼食となった。まずは梅酒を水で割って食前酒をグビッと。おいちぃ〜。そしてメニューはやっぱりそう麺だ。大量のネギと少量のわさび・七美を入れて食べる。旨い!カラット晴れた快晴の空。夏の強い日差しに映し出された美しい山と川。そんな風景に癒されながら食べているからなおさら旨いのである。

 昼食中に地図を見て確認した結果、距離的にあと1時間ちょっとで到着するであろうとのことなので、満腹感と梅酒のほろ酔いかげんのいい気持ちの中、岩魚止滝に向けて再出発した。

  ついに岩魚止滝に   

 上流に上がるにつれ水の冷たさも増し岩魚のサイズもますます良くなってくる中、ついに目の前に見附川の岩魚止滝が現れた。私は渓流釣りを始めた頃「岩魚は上流のどこまでもいる」と思っていたのだが、青木君に勧められて「渓流」を買って読むと岩魚にもその場所以上は遡上できない「魚止めの滝」があることを知りました。それから「魚止めの滝まで行って釣りをしたい」という憧れがふくらみ続け、ついに今その場所へ到達することができたのです。


 



 まずは青木君が餌釣りでアタックすることになり準備が整うと、カメラマンの武田さんもスタンバイOKである。まずは滝の右側にある石の下にゆっくり餌を流して探ってみるが反応がない。今度は左側の淀みに流すと目印に反応があり「来た!」尺2寸サイズの岩魚が掛かった。すかさず武田さんがカメラのシャッターを切り写真を撮っていて、青木君岩魚を手に記念撮影まで終了。なんという手際の良さ。選手交代、次は私が得意のルアーで(ルアーしかできないけど)同じく左側の淀みに投げるといきなりヒット、でも針掛かりが浅くばらしてしまう。まずい釣れなくなると思いすぐさま同じ場所に投げ込むとまたヒットし今度は慎重に取り込み、同じように記念撮影して終了。今度は、青木君が私のルアーを使って尺2寸サイズを釣り上げた。すると、それまでカメラマンに徹していた武田さんがルアーを手に取り、竿を振りはじめた。残念ながら待望の1匹は釣れなかったが、ルアー釣りにとても興味を持ったようである。私もその姿勢を見習いテンカラや餌釣りを学んでいきたいと思いました。岩魚止滝での釣りを十分に堪能した後、今晩のおかずにする岩魚を何匹かキープして夜の宴会のために急いでテン場へと戻った。



 チョー最高!(^^♪

 日も落ちる頃、テン場へ到着しすばやく着替えを済まして今日の宴会の始まり始まり。
 まずは今日一日の労をねぎらいビールで乾杯!「グビィ、グビィ。プハァ〜!」「ウマイ」みんな知っていることだと思うがやっぱりこの一杯は格別だ。のども潤いさっそく調理の開始だが何といっても今日のメインは「岩魚寿司」である。今回の釣行でどうしても食べたかったものだ。ちなみにこの3人の中で岩魚寿司を作れるのは武田さんしかいないので、ここはすべてお任せである。「岩魚寿司なんて何処で知ったの?もう二度と作んないよ。」などと言いながらてきぱき準備をしている。まずは、飯焚きから始まりましたが私が言うのも恐れおおいのですがさすがはベテラン、3合の米を焦げ一つなく真っ白ふっくらに炊きあげた。(どうやったら出来るの?)そこに寿司の素を入れてご飯と良くかき混ぜて冷ますために少し置いておく。次に3枚におろされた岩魚の身を寿司サイズに切りネタとしてきれいに並べておく。そして、いよいよ握りである。手頃な大きさに米を握りかたちを調えわさびを少々塗る。そこへ岩魚の身をのせてもう一度軽く握る。完成だ。職人も顔負けの手際の良さでアッという間に20貫ほどの岩魚寿司が作られてしまった。見ているだけで思わずよだれが出て来た。武田さんの「どうぞ!」の声でさっそく1貫いただく。「・・・旨い!」形容する言葉がないくらい本当に旨い。しいて言うのならば(言うのかい!)ふっくら炊きあがった白くて甘い米に、寿司の素の程良い酸っぱさをからませ、そこにピリッと辛いわさびを、そして最後に取れたて新鮮で身の締まったプリプリの岩魚の身が加わったこの寿司に、少しの醤油を付けてそれがすべて口の中で混ざり合った時の旨さをあなたは想像できますか。(想像できない方は残念、一度お試しを)これこそチョー最高である。これで今回の釣行の目的が達成された。もう思い残すことは何もない。

 美味しい川や山の幸をお腹いっぱい食べ、美味しいお酒を飲みながら今夜も何千という星空の下で楽しい宴は遅くまで続くのであった。

最終日まで楽しみが

 3日目の朝、フライシートをたたく突然の雨音に驚いて目が覚めた。とりあえず食器や濡れては困る物を急いでフライシートの下まで運び込み目覚めのコーヒーを飲みながらしばらく様子を見ていたが、雨がこれ以上強くなるような心配はないようだ。シンシンと降る雨の中、今回の釣行に持ち込んだ残りの食材ともともと少なかったお酒をいただきながら出発までまったりとした時間を過ごすことが出来た。
 雨もあがり日差しが戻ってきた11時前に、3日間お世話になったテン場をきれいに片付けた後、しっかりゴミをザックに詰め込み出発することになった。どこの渓でもそうだが、我々がこれからもこの楽しい源流遊びをずっと続けていけるようにするためには、テン場をきれいに使いゴミの持ち帰りを心がけたいものである。
 テン場を出てしばらくすると、水晶滝に到着した。思い出して欲しい、1日目にあった出来事を。そうここで我妻さんが白い大岩魚を目撃して残念ながら釣れなかった場所だ。帰りに竿を出す予定は無かったのだがここだけはやらないわけにはいかないと話していたのだった。何といっても我が群遊会は「山岳渓流釣倶楽部」という肩書きにあるように「釣倶楽部」なのだ。決してただの大酒飲み集団ではないのだ。(勝手なことをいって済みません)したがって、目の前に大物がいるのにそれを素通りするような事は決してしないのである。ということで作戦は、青木君が滝の直下を餌釣りで攻めて、私が滝を降りた下流からルアーで狙うことになった。ここで何とか白い水晶大岩魚を釣り上げるために粘り強く攻めるが2人の竿にはまったく反応はなく、シャッターチャンスを狙ってカメラを構えていた武田さんも首を横に振っている。が、諦めかけたとき青木君の竿に強い引きがあった。ついに水晶大岩魚か!武田さんもこのチャンスを逃さず写真を撮っている。しばしの格闘の末ようやく岩魚が見えた。「オオ!40cmオーバーか?・・アレ?それほどでもないか」
 取り込んだ結果、35cmぐらいのサイズであった。普通であればこれでも十分な大物なのだが期待が大きかったぶん何とも気が抜けてしまった。幻の水晶大岩魚は幻のままであった方が次に来るときの楽しみが増えるのでそれもまたいいかもしれない。竿をしまい水晶滝を後にしようと下流に進むとなんと10匹以上の尺2寸くらいの岩魚が上流を向いて群遊しているではないか。私は初めて見る光景にこの川の豊かさに敬服してしまった。
 水晶滝を後にして、帰りのルートについて山道で行くか川下りで行くか3人で相談したが、できれば楽な方でとの結論に達したので楽ちんラッコ川下りとなった。ただ途中飛び込むところが2・3箇所あるので巻かれないように注意されたが、何を隠そう私は初ラッコ下りなのである。そしていきなり飛び込みが現れた。武田さんに「左側に入っちゃうとぐるぐる巻かれて出られなくなるから気をつけて」と言われとたんに不安になる。まず武田さんが「ザブン!スイー。」とクリア。続いて青木君が勢いよく「ドボン!スイー。」と楽しんでいる。そして私はビビリながら「ドッボン!グルリン?」あれ前に進まない。巻かれた。あわてて壁の岩を蹴って抜け出した。しかし仰向けで進むはずのラッコ泳ぎがうつ伏せ状態になりそうで、手足をばたつかせて何とかバランスを保って泳ぎ切ったのだがその必死の様子を見て2人に笑われてしまった。何度か泳ぎを繰り返しているとようやくコツがつかめてきてようやく楽しくなってきた。なるほど楽ちんだ。
 無事に川下りを終えて、来るときに通った山道を戻る予定だったが入り口を見落としてしまい、見附ダムのバックウォーターを通っての帰りとなってしまったが、そこでアブの大群に襲われ大変な思いをしてしまった。何とかアブの襲撃をしのぎようやく車へ到着して3人でガッチリ握手を交わし今回の釣行の労と無事を讃え合うことができた。
 本格的な源流への参加はまだ少なく、みなさんにはいつもご迷惑をかけてばかりですが、またの機会にご一緒いただけますようよろしくお願いします。我妻さん、教えていただいた通りにやったら2日目は爆釣でした。有り難うございました。武田さん、昨年に引き続きすべての面に置いてお世話になり有り難うございました。岩魚寿司は最高に旨かったです。青木君、今回食担ご苦労様でした。
 最後に釣りを楽しみ、美味しいお酒を飲み、美味しい物を食べ、豊かな川とそれをはぐくんでいる森の中で過ごせた3日間はとても幸せでした。この楽しみがいつまでも味わえる事ができるように自然を守って行かなければならないと心から思いました。(のざき ひろゆき)